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悋気の炎

 俺とルッサールは互いに間合いを取りつつ相手の出方を見守る。

 ルッサールは水の神を自称している奴で、今は女の身体にケープをまとっている姿だが、元は白いぶよぶよの液体だった。


「本当に神だとでも言うのか?」

「我の力、試してみるとよかろう」

「面白い……Rランクスキル雷光の槍(ライトニングランス)っ! 貫け、雷撃の穂先よっ!」


 俺の手の平から雷撃が発射される。

 間合いを取っている事が間接攻撃にとって利点となっていた。


「ふんっ!」


 ルッサールが両手を前に突き出す。


「それで防ぐつもりか!」

「ふっ」


 前に出した両腕が雷撃に打たれて弾け飛ぶ。

 腕は水滴となって辺りへと散らばった。


「あいったぁ!」


 両腕を失ったルッサールが辺り構わず駆けずり回って痛みに耐えようとしている。


「レア度Rランクのスキルでこれか。神の名が泣くぞ」

「ふぉっ!? ふっふっふ……いたた! 痛い!」


 ルッサールはしゃがみ込んでうずくまってしまう。


「どれだけ強いのかと思ったら、そうでもなさそうだな」


 だが俺に敵意を知らせる敵感知センスエネミーは発動したままだ。

 どこから攻撃を仕掛けてくるのか。それともただ俺に向かって殺意を持っているだけなのか。


「ゼロっ!」


 ルシルの声が響く。


「なっ!?」

「つっかまーえた」


 脂汗を垂らしながら不敵な笑みを浮かべるルッサール。

 奴の両腕は宙に浮かんで俺の腕を後ろからつかんでいた。


「我とて神の端くれ、これくらいの芸当は朝飯前よ」

「まさか吹っ飛んだ腕が俺を締め付けてくるとはな……。元は液体だった事を意識していなかったぞ」

「それはそれは。であればこれはどうじゃ?」


 ルッサールの顔が近付く。

 俺の目の前に奴の顔がある。


「あ~ん」


 ルッサールが口を開けて中からなまめかしい舌が飛び出してきた。


「これでお前の喉をふさいだらどうなる事か。くふふふ……」


 ルッサールの分離した腕が俺の顔に伸びてきて、無理矢理に口を開けさせる。

 俺の口にルッサールの舌が入り込もうとしていた。


「SSSランクスキル地獄の骸爆(ヘルズ・バースト)っ!」

「ぼぎゃっ!」


 ルッサールが爆炎に包まれ悲鳴を上げる。


「勝手な事はさせないわよ! この白ブヨの出来損ないっ!」


 ルシルの両手からほとばしる炎がルッサールを包み込んでいた。


「ぎゃっ、ぎゃぁ! だめだめだめ! 我は炎が苦手なのじゃ! やめっ、やめろぉ!」


 必死に抵抗するルッサールを尻目に、ルシルは炎を途絶えさせないどころかその炎の中に爆撃も追加する。


「だめだめだめだめだめ! は、弾けちゃうぅ!」

「そのまま消えてしまいなさいよっ!」

「やめぇ~! やめてぇ~!」


 徐々に蒸発していくのか、ルッサールの身体が小さくなっていく。


「もう……やめぇ……」


 ルッサールが子供くらいの大きさにしぼんでしまう。


「ルシル、その辺で」

「駄目。こいつゼロにくち……殺そうとした」

「ま、まあそうだけど」

「それともゼロはこいつに口をふさがれたかったの!?」

「いやあそういうつもりは。な、それはそれとして、もう止めてやってくれないか」

「ん~……、しょうがないなあ。そこまで言うなら」


 ルシルが炎の放出を止める。


「ぜぇっ、はぁっ、はぁっ……」


 ルッサールは小さくなった身体であえいでいた。

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