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門前の反抗勢力

 ジャガードたちは薄ら笑いを浮かべながら門前に居座っている。


「素直に通してくれるとは思えないが一応言っておく。俺はゼロ・レイヌール。レイヌール勇王国の国王にして勇者王ゼロだ。お前たちの中には俺の顔を見知っている者もいるだろう」


 俺が大音声で呼びかけると、少なからず連中に動揺が走った。


「今なら咎めはしない。王国の臣民としてこの浮遊島の謎を解き明かしきたる厄災に備えるため、お前たちの力を貸して欲しい。どうだ!」


 俺は先程拾った穀物の茎を数本束にした物を手にする。

 先の割れた鞭のようになるその茎束を振り回すと、空を切る音が辺りに聞こえた。


「俺の言っている事に従わなければ、少々痛い目に遭う事になるぞ」


 ゆっくりと町の門に向かって歩き出す。

 男たちはどうしていいか判らなくなった様子で互いの顔を見ていた。


「え、ええい! 王様がこんな所に来るはずがない! てめぇら冒険者の看板背負ってんならこんな奴とっちめちまえ!」


 ジャガードが一人気を吐くと、それに呼応するかのように男たちも改めて戦闘態勢を取り始める。


「行くぞ野郎ども!」

「おうぁ!」


 冒険者たちが一斉に襲いかかってくる。


「う、うわぁ!」


 勢いに飲まれたのかサトシが頭を抱えてしゃがみ込む。シーナもサトシの後ろに隠れるようにして縮こまっていた。


「ゼロ、大丈夫?」

「ああ。任せろ。ざっと十人程度だろう。この茎束で十分だ。あいつに踏み潰された穀物の茎だ。せいぜい痛い思いをしてもらうさ」


 俺は飛びかかってきた一人目を茎束で張り倒す。

 少し水分を含んだ茎束が男の顔面を捉える。


「うぎゃっ!」


 男に当たった束が無数の切り傷を付けていく。


「そうわめくな。大した深さの傷でもあるまいに」


 そう言いながら俺は次の奴の腕をはたく。

 はたかれた奴は持っていた武器を取り落とし、打たれた腕を押さえてうずくまる。


「思ったよりも歯応えがないな」


 次々と襲ってくる奴らに防具の隙間を狙った一撃を加えていく。


「ぎゃっ!」

「いてぇ!」

「ひゃぁ!」


 打ち据えられた連中は攻撃された箇所を押さえながら転げ回っていた。


「言う程大した事はない、か」

「なにおう!」


 ジャガードは片手斧を上下左右に振り回し、俺との間合いを詰めてくる。


「お前が最後の一人だが、それでもまだ立ち向かってくるのか?」

「この俺ジャガード様は他の連中と違うぞ!」

「まったく、他の連中とか言い放って、お前の仲間だろうが」

「うるせぃ! そんな草っぱでやられる連中は仲間でも何でもねぇ! 見ていろよ、この俺様の斧捌きをよぅ!」


 ジャガードは片手斧を大きく振りかぶって一気に間合いを詰めてきた。


「だが遅い、Rランクスキル発動、超加速走駆ランブースト! 駿足をもって駆け抜けろ!」


 俺は最速の動きでジャガードの背後を取り、無防備な首筋に茎束を打ち付ける。


「あびゃぁ!」


 ジャガードは一瞬動きを止めるが、俺の方を振り返りもう一度斧を振り下ろそうとした。


「ほう、あの一撃でも心が折れないとはたいしたものだ」


 俺は更にジャガードの太ももに茎束を当てる。


「いてぇぁ!」


 ジャガードは片足で跳びはねながらもまだ俺に向かってにらんできた。


「ほほう、確かに肝は据わっているようだな」


 俺はジャガードの顔面を狙って茎束を振り下ろす。


「それを待っていたぞ!」


 ジャガードは片手斧を横に払って茎束を弾き返そうとする。

 茎束は一瞬で硬くなり片手斧の刃に食い込む。


「なっ、なんだとぅ!」


 そのまま茎束を振り抜くと片手斧が砕けて散った。


「だが斧はまだあるんだぜぃ!」


 すかさずジャガードが腰に下げている片手斧に手を伸ばす。


「もういい面倒だ」


 俺はジャガードの顔面を踏みつけるような蹴りを入れた。


「ぶっ! びゃふぅ! け、蹴るとは……きちゃない……」


 ジャガードは鼻血を噴き出させながら倒れる。


「汚いも何もあるか。別に俺はこの茎束で十分とは言ったがこれだけで戦うとは言っていないぞ」


 俺は溜めていた息を吐きながらつぶやく。


「ねえゼロ、もう聞こえていないみたいだよ」


 ルシルが言うように、ジャガードは白目を剥いて意識を失っていた。

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