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封印をする者

 背後から襲ってくる圧力。殺気とも取れる意識が俺たちに向けられる。


「がっ、はぁ~!」


 内臓をえぐるような深い吐息が聞こえた。


「まさか……」


 俺は恐る恐る振り返ると、信じられない光景が飛び込んでくる。


「ブラックドラゴン!」


 ルシルの叫び声で俺は我に返った。

 アガテーの隠密入影術(ハイドインシャドウ)も間に合わない。俺の隣で短剣を構えていた。

 俺はルシルとトリンプをかばうようにしてブラックドラゴンの前に立ち塞がる。


「腹をえぐったのに、まだ生きていたか」

「それよりもゼロ、ブラックドラゴンがしゃべったよね……」


 言われてみれば確かにそうだ。今まで人の言葉は何一つ言わなかったブラックドラゴンだ。


「なぜ急に……まさか!」

「ほほう、勇者くんは気が付いたようだねえ」

「凱王っ! 今度はドラゴンの身体に取り憑いたか!」

「くっくっく……」


 ブラックドラゴンはくぐもった笑い声を上げた。

 鱗で覆われたいかつい顔では表情が判らない。だが己の優位性に喜びを噛みしめているようにも思える。


「くっく……ぐっ! うぐぅ!」


 笑っていたものの急にブラックドラゴン、いや凱王が苦しみだした。


「それはそうだろう、俺が腹をえぐったままだ。ドラゴンの身体に取り憑いたという事は宿主のドラゴンは既に死んでいたと見える」

「ぐ、ぐぐぐ……」


 苦しそうにあえぐ凱王。


「ドラゴンが死ぬ程の傷だ。それを治療しないまま思念体が取り憑けば、それは死ぬ程痛いだろうな」

「ぐ……しかし、他に空いている身体は……」


 よろめきながらトリンプが凱王に近付く。


「トリンプ、危険だぞ。痛がっているとはいえ凱王は何をしでかすか判ったものでは……」

「いえ、ちんに牙を向ける事はない。そうであろう凱王」

「ぬ、ぐぐぐ……」


 凱王は取り憑いたブラックドラゴンの身体で傷口を押さえながらうずくまる。


「トリンプ、お前の記憶は凱王が封印したんじゃないのか? こんな奴に近付いては危ないぞ」

「朕の記憶を封じたは凱王ではない」

「そうなのか?」

「うむ。朕は人ならざる高位の存在によってその力を封じられたのだ」

「高位の……存在」


 トリンプは小さく、だがしっかりとうなずく。


「トライアンフ第八帝国の傘下である凱国の王が朕に対して反旗を翻すならいざ知らず、そこまでの力を持たない凱王にどうして朕の記憶を封じる事ができようか」


 ブラックドラゴンの図体を縮こまらせながら凱王は大人しく聞いていた。


「凱王ではないとすると、その高位の存在っていうのは、まさか……」


 俺の言葉にトリンプは改めてうなずいた。

 聞きたくない、信じたくない言葉がトリンプから放たれる。それは爆発よりも俺たちに衝撃を与えるものだった。


「そうだ、神と呼ばれる者たちだ」

【後書きコーナー】

 本作の初回投稿が2019/1/16です。

 そして今回の投稿は2020/1/15、という事はこれで365日毎日投稿できたという事になりますね。

 これもひとえに応援して下さった皆様のお陰です。ありがとうございます。

 もう少し続きますので、次の展開もお付き合いいただければ嬉しいです。


 それと、ブックマーク、評価が継続の励みとなります。

 書籍化なんていう事もあるかもしれません。

 引き続き、応援お願い致します!

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