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揺り起こす意識

 ブラックドラゴンは戦う事ができずにその身を横たえている。凱王も神経毒で麻痺して動けない。


「ぐ、くっ……」

「静かにしていろ、と言ってもこれ以上声も出せないか」


 俺は凱王の身体を拘束した。手足をアラク姐さんの糸で縛れば麻痺が解けたとしても身動きは取れないだろう。


「まあ神経毒が消えるまで待つ事も無いのだがな。ルシル、頼めるか?」


 壁際に退避していたルシルが近付いてくる。


「どうするの?」

技能の吟味(チェック・ザ・センス)、能力を確認するスキルを持っていただろう」

「う、あるけど……」

「凱王、いやトリンプに使ってもらう事はできるか?」

「えっ!」


 ルシルは驚いて後ずさる。


「前、俺にやってくれた時に隠れた能力を見つけてくれただろう。同じようにトリンプの意識の中で表に出ていない記憶が無いかと思ってな。首筋に噛みつくのは抵抗があると思うが……」

「あ、いや、えっと……」


 ルシルが言い淀む。当然だろう、あれは魔王の使えるSSSランクのスキルだ。そうおいそれと使える物でも無いらしいし、条件も厳しいと言っていたからな。


「俺ができればいいんだが、勇者系スキルでは深層意識の検知はできなくて……」

「い、いいよゼロ、私がやるから……」


 ルシルに俺の思いが通じたのか、スキルを使ってくれる気になったようだ。


「じゃあ……」


 ルシルは凱王に近付く。凱王は思念体となってトリンプの身体に入り込んでいる。姿形はトリンプに変わりはない。


「ちょと手を」


 ルシルが凱王に取り憑かれたトリンプの指をつまむ。


「魔王固有、SSSランクスキル技能の吟味(チェック・ザ・センス)……」


 爪の剥がれた指を少しだけ舐める。


「ん……、なるほどね」

「あ、あれ? 首筋は?」

「えっと、その……」


 ルシルはばつの悪そうな顔をした。


「私も成長して、これくらいで判断できるようになったのよ、うん! そういう事だから!」

「まさか初めから……」

「そんな事はない、そんな事はないよ! ほらトリンプの記憶、ね!?」


 ルシルは取り繕うようにまくし立てながら説明する。


「トリンプは記憶が失われているって言っていたよね」

「そうだな」

「でもね、本当は記憶が封印されていただけなの」

「封印だって?」

「うん。それを解くには魔力の解放が必要なんだけど……」


 まだ麻痺が残る凱王が喉の奥で笑う。


「くっくっく……」

「何がおかしい」


 俺は蹴飛ばしてやりたい衝動に駆られたが、身体がトリンプの物だという事でどうにか踏みとどまった。


「く、くくく……。か、解放……お前たちに、それが……できるもの、か……」


 痺れているために口も上手く回らない。息を切らせながら凱王がつぶやく。


「それなんだけど」


 ルシルがかがみ込んで凱王を見る。


「今ので解き方判っちゃったんだよね」

「な、にぃっ……」


 凱王が痺れる中で目を見開いた。


「力の解放という事だと……ゼロ」

「やはりあれか。確かにSSSランクの勇者系最強クラスのスキルだからな。だが俺自身の魔力解放には使うが、それを……」


 ルシルは俺の方に振り向き、促すようにうなずいた。


「やってみて、ゼロ」

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