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再戦ブラックドラゴン

 百八階層は玉座の間だけで構成されている。他には部屋がない。


「これだけ広ければドラゴンも十分に動けるって事だな」

「ドラゴンの寝床みたいな狭いところでチクチクできなくなっちゃったね」

「それでも空中戦にならない所は助かるが」


 俺は剣を抜き払い、ゆっくりと間合いを詰めていく。


「ニーズヘッグ、少し遊んであげるといいねえ」


 凱王は座ったまま後ろのドラゴンに話しかけた。

 ドラゴンにしてみれば会話ではなく命令なのだろうが。


「ゼ、ゼロちゃん……ごめん」


 アラク姐さんはドラゴンの呪いと言うべきか、死の咆哮で恐怖心を植え付けられてしまっていた。


「いいさアラク姐さん、後ろで待っていてくれ」

「済まない……」


 アラク姐さんは自分で自分を抱きしめながらよろめく足取りで入り口脇の壁に寄りかかる。

 無理をさせられないからな、ドラゴン戦には加われないだろう。


「ルシルも下がっていてくれ。このドラゴンは俺が相手をしよう」

「大丈夫? 前の戦いでは私たちだけで倒しきれなかったから、私も手伝いたい」

「あの時は俺がドラゴンと戦っていなかったからな。ドラゴンと戦ってみたいと思ったんだよ」

「そう、それならいいけど。無理しないでね」

「ああ。行ってくる」


 俺は軽くルシルの頭に手を乗せる。


「いってらっしゃい」


 ルシルは壁まで後退して、アラク姐さんを補助してくれた。

 アガテーはもう既に部屋のどこかへ忍び込んだようだ。柱や調度品など隠れる場所はそれなりにありそうで、隠密入影術(ハイドインシャドウ)を使うには十分な死角が確保できる。


「さてとブラックドラゴン、その硬い鱗は矢を受け付けず剣を弾き返しその鋭い爪と牙はどんな盾も鎧も切り裂いてしまうというが、それが本当なのかただの噂なのか。確認させてもらうぞ」

「ニーズヘッグ、あの勇者くんはかなりの手練てだれだからねえ、気を抜いたら一瞬でこっちが食われるからねえ」


 凱王の言葉にドラゴンが咆哮で応えた。

 その響きが部屋全体に伝わる。


「とっとと始めるとするか。Sランクスキル発動、風炎陣の舞(フレイムストーム)! 爆炎の風で敵を焼き尽くせ!」


 俺の左手から炎が噴き出し渦を巻いてドラゴンに向かっていく。

 ドラゴンは翼をはためかせると炎の渦が逸れて壁にぶつかる。ぶつかった壁に穴が空き、外の風が勢いよく吹き込んできた。


「いきなりの大技だねえ」


 凱王が呆れたように言い放つ。


「だが魔力吸収は持っていない」

「ニーズヘッグには必要ないからねえ」

「確かにドラゴンにこの程度の炎では傷一つ負わせる事もできないだろうが」

「だからと言ってもっと強い爆発なんか起こした時には、この塔自体が崩れてしまうだろうねえ」


 凱王のひねた笑みが止まらない。


「だから塔の最上階にいたのね」


 ルシルが壁際で指摘する。


「卑怯だと思うかねえ、小さい魔王さん?」

「いいえ真っ当だと思うわ。そうでもしないと一方的な戦いになってしまうでしょうからね」

「はははっ、言うねえ!」


 凱王の高笑いが部屋に響く。


「当然相打ちなんて考えていないだろうからねえ。制限の中でもがき苦しんでもらいたいものだねえ!」


 厳しい視線を放つ凱王。

 だが奴の言う事ももっともだ。俺は剣を構えたままドラゴンの正面で次の手を考えていた。

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