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対峙

 百八階層。外から見た限りでは何階まであるのかは判らない。倒した敵から得た情報だけに信用度は低いが、一つの区切りにはなるだろう。

 俺たちはその百八階層に向かう階段を上っている。


「ここだけは階段が外なんだ」

「へ、へぇ」


 それまでは塔の中に階段があったが、百七階層から百八階層に行く階段は塔の外に備え付けられていた。


「流石に高いな。それにこれだけ高いと風も強い」


 下に見える建物や木の大きさから見ると、三百メートルは優に超えている高さだろう。


「人が蟻のようだ」

「おや……ゼロちゃんは高いところ平気なのかい?」

「ああ、大丈夫だが」

「そうかい、てっきり地下の冒険で吊り下げられたりしたから高いところが苦手じゃないかな~って思ったんだけどね……」


 アラク姐さんは砂漠の迷宮で俺が女王虫の巣が崩壊した時に落下しそうだった事を言っているようだ。


「あの時は助かったが、だが別に高さには恐怖心を持ったりしないな」

「そうなんだ、へぇ」

「ウィブに乗って高空を飛んだりするしな。あれ?」


 俺はアラク姐さんの顔を見る。


「あれ? アラク姐さん、もしかして……」

「え、別に、アラク姐さんはね……」

「一緒にウィブへ乗ったよね」

「う、うん」

「天井から吊り下がったりするよね」

「うん」

「怖いの?」

「うん」


 アラク姐さんは素直にうなずく。


「こういうさ、ちゅ、中途半端な高さが……ちょっとね」


 アラク姐さんは俺の腕にしがみついてきた。


「そうなんだ。人も高すぎる場所ではそんなに恐怖心が現れなくて、身長の倍や三倍くらいの高さの方が痛さが想像できるから怖く感じる、なんていう話を聞いた事があるけど、アラク姐さんにとってはこの高さがそれなのかな」

「お、落ちたら命の危険があるっていう高さだよね」

「普通の人間なら絶対死ぬけどね」

「だ、だよね……」


 アラク姐さんが腕に力を入れる。その分柔らかい物が俺の腕に押しつけられるのだが、俺は顔が赤くならないように極力気にしないようにした。

 高いところが怖いなんて可愛いところもあるんだな、と思いつつ怖がっているのが本当だったら突き放すのもかわいそうだからな。


「ゼロ、そろそろ次の階だよ」

「トリンプがいるかな」

「トリンプの身体を乗っ取った凱王ならいそうだけどね」


 俺たちは階段を上りきり、目の前の扉に手をかける。


「つっ!」


 もうこの時点で耳の奥が痛くなった。常時発動のNランクスキル、敵感知センスエネミーが反応したのだ。


「俺に向けての殺意が存在する……」


 俺は慎重に扉を押した。

 扉は両開きで広がる。


「ほう」


 扉から真っ直ぐに赤い絨毯が敷かれていた。

 そしてその先には豪華な玉座に座る少女の姿があり、その玉座を抱えるかのように後ろで座っているブラックドラゴンがいる。


「太陽の塔百八階層へようこそ来たねえ、勇者くん」

「トリンプの声で変な言い方をするなよ凱王」

「おやおやご挨拶だねえ。トリンプ様の身体はぼくのものなのだからねえ」


 不敵な笑みを浮かべる凱王。トリンプには悪いが一発ぶん殴ってやりたいと思った。

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