ワンフロアクリア
二階への階段がある部屋にいたのはゼッヘーセンコンという奴。
「またしても百八がどうとかいう」
「凱王様直属の百八星が一人、ゼッヘーセンコン様だ!」
腕を組んで立ちはだかるゼッヘーセンコン。この部屋は入り口のホールと対象の位置にあって、大きさも同じくらいだからかなり広い。
「ゼロ、きっとこいつも」
「魔力吸収を持っている、だろうな」
俺は声を張り上げて百八星に話しかける。
「お前たちの負けは確実なものとなった! このまま去ればよし、さもなくばその骸を階段の下にさらす事となるだろう!」
「ほう、威勢がいいなお前! まだガキのようにも見えるがまあいい。ここまで来たという事はそれなりの力は持っているだろうからな」
ゼッヘーセンコンは腰の両脇に下げた剣を抜いた。
「二刀流か」
「珍しいかい? だがその驚きもどれだけ続くかな? 死んだら驚く事もできないからなあ!」
ゼッヘーセンコンが俺に向かって飛び出してくる。
「Nランクスキル発動、火の矢! かの者を突き刺せ!」
俺の両手から無数の火の矢が生み出された。それらが一斉にゼッヘーセンコンを狙って発射される。
「効かぬ!」
予想通り、ゼッヘーセンコンの身体に触れるか触れないかといったところで矢が消されてしまう。
「食らえぃ、罪とバツの字斬りっ!」
ゼッヘーセンコンが両手の剣を交差させるように振り下ろす。
俺は覚醒剣グラディエイトを構える。
ゼッヘーセンコンの攻撃で生み出された衝撃波が俺の剣を襲い、ほんの少しだけ軸がぶれたところで剣自体が交差して斬りつけてきた。
「だがっ!」
俺は身体を右にずらして一撃目を避け、もう一撃を剣で弾く。
弾くと同時に剣を押しゼッヘーセンコンに圧力をかける。
「なんと!」
ゼッヘーセンコンが攻撃に加えた力に俺の力を上乗せして跳ね返したのだ。弾かれた剣がゼッヘーセンコンの手を離れ宙に舞う。
その剣が天井に突き刺さった。
「あっという間の二刀流だったな」
俺は剣先をゼッヘーセンコンに向ける。
持ている剣が一本になったゼッヘーセンコンは、一歩、また一歩と間合いを広げようとした。
「させない。Rランクスキル発動、超加速走駆!」
俺は瞬時にゼッヘーセンコンとの間合いを詰める。
「ぬぁ……」
言葉にならない何かを口走ったゼッヘーセンコンのもう一本の剣を手首ごと切り落とす。
「ぐぎゃぁあ!」
血があふれ出す腕を抱えてゼッヘーセンコンがうずくまる。
「ぐぬぬ、よくも俺の腕を……」
俺は剣を大きく振って付いた血を振り落とし、鞘に納めた。
「ほえ、なんで剣をしまう……の?」
「そんな事決まっているだろう」
俺はルシルたちを連れて階段を上っていく。
「お、おい、おまへら、ほへほへ」
ゼッヘーセンコンの顔に縦の筋が現れる。
「へほー……ぶちゃらっ!」
縦の線が頭から身体にまでつながり、それを中心に左右へ裂けて倒れた。
「なぜ剣をしまったのか、それはお前が俺の敵ではないからだ」
「もう聞こえていないよゼロ」
「そうかもな」
俺たちはゆっくりと警戒しながら階段を上っていった。