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再集結と再構成

 塔とは言うが、一階一階がかなりの広さになっている。


「入ってはみたものの、中も広いぞ……」


 俺はあっけにとられているルシルに話しかけた。


「一階だけで何部屋あるのかも判らないね」

「広すぎて想像も付かないな。とにかくここを拠点とするためにも中を掃除しなくては」

「そうね。入り口はここの他に何カ所あるかしら。外から調べていなかったけど少なくとも四方にはありそうね」

「今いる仲間たちだけでどう占拠するかだな。できれば絞れる場所があると楽なのだが」

「それは今守っている凱国の連中も同じよね」

「ああ」


 ひとまず俺たちは入り口を入ってすぐの広間に集合した。

 しんがりを務めていたセシリアが最後に入ってきて扉を閉める。


「セシリア、もう仲間たちはいないか?」

「ああ、俺が最後だよ勇者ゼロ」


 男装の麗人らしい口ぶりに戻っているセシリアが剣を納めて大きく息を吐く。


「今回はしてやられた。コームの町を守れずに済まない事をした」


 謝るセシリアにベルゼルも同調する。


「ワタクシも同様でございます。ゼロ様にお任せいただきました事もまっとうできず、申し訳なく存じます」

「町の事は構わん。それよりもお前たちが無事に生き延びてくれた事の方が嬉しいよ」

「婿ど……いや勇者ゼロ」

「ゼロ様、ありがたきお言葉にございます」


 それに合わせてドレープ・ニールや他の者も頭を下げた。

 俺は集まった仲間たちを見回す。


「シルヴィアやカインはどうした。見当たらないようだが」

「シルヴィアちゃんたちは無事に逃げていれば町外れの洞窟に身を潜めているはずだ」


 セシリアが歯噛みしながらも教えてくれる。


「俺たちが不甲斐ないばっかりに……」

「いいんだセシリア、今は無事を願おう。まずはこちらの体勢を立て直してからだが……ルシル、何か感じるか?」

「ゼロも判っていると思うけど気配は多いよね、この塔」

「ああ。上に行く程強い力を感じる」


 今まで不思議だったのはあのブラックドラゴンを見ていない事だ。

 あれだけの大きさだ、凱国の街で騒ぎがあれば上空を飛んでいてもおかしくないと思ったのだが。


「もしかしてこの塔の中にドラゴンがいたり、なんて事は……」

「でもさゼロ、この部屋の広さと天井の高さだったら」

「入らなくもない、か。たとえ頑丈だとしても建物の中で戦いでもしたら、塔もだだでは済まないだろうがな」

「それは危ないね」

「ただ今はこの一階の安全確保を優先させよう。怪我を負っている者には手当てを。装備を今一度確認して、武器庫があればそこから補充しよう」

「うん」

「動ける者は二手に分ける。ベルゼル!」

「はっ!」

「ベルゼルは一隊を率いてここに残って負傷者たちの治療が一段落するまで護衛をしてくれ。門から敵が取り返しに来た時の防衛も頼む」

「承知!」

「アガテー!」

「なあに? あたしなら一人で戦局を覆すくらいの活躍はしてみせますよ、ゼロさん程じゃないにしてもね。傭兵集団、熊の生き残りとして」

「そこは期待している。この一階の探索に付き合って欲しい」

「うふっ、付き合ってって言われて断るいわれはないですよ。何でしたらねやまでお付き合いしますよ」


 アガテーは妖艶な笑みを浮かべて俺の腕を抱きしめる。


「ちょ、おい……む」


 胸が当たっているのだが。アガテーの大きく柔らかな二つの盛り上がりが俺の腕に押しつけられていた。


「む? むって何です? ゼロさん」


 胸の谷間で俺の腕を挟み込むようにして抱きついている。


「ゼロ~」


 ルシルに引っ張られて胸の暴力から解放された。


「んもう」


 アガテーはいたずらを止められた子供のようなあどけない顔をして舌を小さく出す。


「侮れん……」


 俺はかすかにつぶやいたセシリアの声を聞いてしまった。

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