太陽の塔
俺たちは街の中を中央の宮殿へ向けて走って行く。散発的に襲ってくる敵軍は俺が蹴散らしていき、後から続く仲間たちの道を作る。
「この分だと宮殿まではそれ程苦もなく行けそうだが……」
「凱旋気分で気がゆるんでいたっていうのもあると思うよ」
「そうだな、こちらも気を引き締めていかないと」
「でもみんな助けられてよかったよ」
「ああ。他にも捕まっている仲間たちがいないか、アガテーに探してもらっているからな、報告を待とう」
俺は敵と斬り結びながらも突き進む。
目の前には大きくそびえる石造りの塔がある。
「流石に宮殿と言うべきか。入り口の前にはかなりの数が構えているな」
俺の姿を見て宮殿を防衛している兵たちが一斉に抜刀した。
「この反逆者どもめ! 大人しく滅ぼされていればいいものを、それを我が国の中心部まで襲ってくるとは!」
「仕掛けたのはお前たちからだろう。自分たちが噛みつかれる事のない安全な場所にいられると思ったのがそもそもの間違いだぞ。国を攻めるという事は自分たちも攻められるという覚悟を持つべきだ」
「なにをっ! お前たちが帰る国はもう無くなっている事だろう! 万が一ここで我らを倒す事ができたとしてもお前たちはどこへも行けない根無し草よ! 哀れ、涙を誘うぞ!」
「その時はその時だ。この地から旗揚げし直すのもいいだろう」
「くっ……この太陽の塔を守る、我ら守護兵の最後の力を見せてやろう!」
隊長らしい奴が叫ぶと、周りの兵も雄叫びを上げる。
そう言うと敵兵たちは一斉に向かってきた。
「流石に一般兵までは魔力吸収の力を与えていないと思いたいが」
「やってみる?」
「そうだな。Rランクスキル発動、雷光の槍! 雷よ我が敵を撃ち貫けっ!」
俺の手から放たれた電撃が、向かってくる敵兵たちに襲いかかる。
光の帯となった電撃に打ち抜かれて、敵兵が弾き飛ばされた。電撃の走った部分が鞭のように身体へ痕を付け、焦げた臭いが辺りに充満する。
「効いたねゼロ」
「思った通りだ。よし、これなら簡単に殲滅できそうだ。雷光の槍! 雷光の槍! Nランクスキル火の矢!」
俺は矢継ぎ早にスキルを発動させ、塔の前に陣取っていた敵兵をことごとく打ち砕く。
「く、くそっ! 我ら守護兵がたった一人の男に……む、無念だ……」
半身を炎で焼かれた隊長が最後に倒れる。
「上から物を落としてくる奴とかもいなければ、扉を開けようか」
俺は周囲を警戒しながらも塔の扉に近付いた。
「こういう所に罠を仕掛けているものかと思ったがな、どうやら無さそうだ」
「それもそうでしょ、普段使う通路だったらなおさらよ。いちいち罠を避けながら生活するのって大変なんだからね」
「そう言えば魔王城は結構な罠があったよな」
俺の言葉になぜかベルゼルが恥ずかしそうに身をすくめる。
「あれはベルゼルが命じたものだったようだな」
「は、恐れ入ります」
何が恐れ入りますだ。階段や通路に落とし穴や棘の仕掛けがたくさんあったからな、侵入者対策にはいいのだろうが生活する側からすると邪魔でしょうがないだろう。
「この塔もそうじゃなければいいが……」
俺は淡い期待を胸に、塔の扉を開けた。