鉄の巨人
凱国の中心街で繰り広げられる戦闘は一つの節目を見る。
俺たちの仲間はほぼ全員解放され、俺の部隊に合流していた。
反撃を試みたであろう敵軍もおおよそは跳ね返したのだが、唯一王宮への道に立ちはだかるのは鉄巨兵の集団。
「残り七……これで六っ!」
俺は重筋属凝縮で自分の筋力を増強させ、鉄巨兵のコアを破壊していく。
「そう好き勝手にはさせないぞ!」
俺が他の鉄巨兵に攻撃を加えている時に、指揮官機のゲンコーセンゼンが割って入る。
ゲンコーセンゼンが肩に乗った鉄巨兵が俺を踏み潰そうとするが、それを躱しながら落ちていた敵兵の槍をつかみ、別の鉄巨兵へと投げた。
「残りは五機、お前の乗っている奴を含めてな」
「じゅ、十五機もこいつらに、この短時間でやられたというのか」
「そう驚く事もないだろう。ベルゼルたちは数百という鉄巨兵を倒したらしいじゃないか」
「くぅっ……これでは凱王様に顔向けできん……」
「まあ気を落とすなよな」
俺はもう一機、鉄巨兵を打ち倒す。
「俺たちに敵意を向けた時点で、お前たちの最終的な滅亡は確定しているんだ」
「何をっ!」
鉄巨兵が拳を振り下ろすがそんな攻撃が俺に当たる訳もない。
「Rランクスキル発動、超加速走駆! 加えて連撃、Sランクスキル発動、剣撃波! あの鉄の塊を動かぬ塊に変えてしまえ!」
俺は素早く鉄巨兵の死角に潜り込み、剣の衝撃波で斬り割く。
鉄巨兵は手足がバラバラになって瓦礫の山と化す。
「くそっ、くそっ!」
ゲンコーセンゼンが何度となく俺に向かって攻撃をしてくるが一向に当たらない。その隙を突いて俺は他の鉄巨兵を潰していく。
「それなら……こいつを!」
「っ、アガテーか!?」
他の兵と戦っているアガテーが偶然ゲンコーセンゼンの操る鉄巨兵の前に立っていた。
「お前、攻撃をやめないとこの女を踏み潰すぞ!」
「ちっ、仕方がない」
俺は剣を納めると両手を広げて見せた。
「やれるものならやってみろ」
「なぁにぃ!」
ゲンコーセンゼンはあからさまに頭に血が上った様子で、俺とアガテーをにらみつける。
「そこまで言うなら望み通りにしてやろう! 踏み潰されて死ねぃ!」
ゲンコーセンゼンの操る鉄巨兵がアガテーと戦っている兵士ごと踏み潰す。
「味方ごととは、見下げ果てた奴め」
「吠えろ! わめけ! お前の一味を一人でも潰せれば……え?」
鉄巨兵の足下に踏み潰された兵士とアガテーの立っている姿があった。
うっすらとアガテーの姿は揺らいで見える。
「馬鹿め、残像だ」
アガテーは鉄巨兵の背後から剣の一撃を加えた。
狙いは鉄巨兵の膝の裏。装甲と装甲の間に剣を突き立てると、中で何かをえぐるように動かす。
「なっ、なんだと!」
ゲンコーセンゼンの鉄巨兵は片膝を破壊され倒れ込む。
「ひ、ひやぁぁ!」
鉄巨兵の肩から振り落とされ地面に叩き付けられたゲンコーセンゼンの上に、倒れてきた鉄巨兵がのしかかる。
「や、やめ、やめてぇ! ぷぎゃっ!」
ゲンコーセンゼンの悲鳴と共に、鉄巨兵の倒れた音と衝撃が辺りに響いた。
「鉄巨兵に踏み潰されたのはお前の方だったな」