生き残るための活路
「どけぇ! 散れぇ! 民には被害を出したくない! 戦えぬ者は去れぇ!」
俺は仲間たちを助けながらも一般市民に呼びかける。
なるべくなら戦いに巻き込みたくない。
「ゼロ、どうして敵国民まで守ろうとするの?」
「守る訳ではないが、間接的に戦闘へ関わる者まで殺してしまっては焦土になってしまう。できる事なら俺たちへ直接的に攻撃してくる奴らだけを倒したい」
「でもそこまで選別したら逆にこっちが危ないよ」
「だからさ、まずは自分の命優先だ。自分が生き残るために敵の非戦闘員を殺さなくてはならないとしたら、それは殺してでも自分が生きなければならない!」
俺はまだ慌てふためいている敵の監視役、捕虜を連れて行くだけの見張り役の兵をなぎ倒してく。
「邪魔だ! どかないと斬り捨てるぞ!」
俺の恫喝で一般市民が蜘蛛の子を散らすように逃げていく。
「敵軍は自国民だ、俺たちとは違って邪魔だから斬り捨てるという訳にも行くまい」
「その混乱を利用したのね」
ルシルの問いに俺は黙ってうなずく。
「ゼロちゃん!」
「どうしたアラク姐さん!」
「前、あの鉄巨兵たちが!」
二十体の鉄巨兵が俺たちに向かってくる。
「まさかこの街中でいきなり攻撃を仕掛けてくるとは思わなかったぞ、反逆者ども!」
ゲンコーセンゼンが鉄巨兵に乗りながら近付いてきた。
「ベルゼル、いるか!」
俺は混乱の中で戦っているベルゼルを呼ぶ。
「はっ、ゼロ様お呼びでしょうか」
「お前たちは攻められた時にあの鉄巨兵を大量に倒したらしいが」
「はい、敵は三百を超える鉄巨兵を引き連れておりましたが、そのほとんどを破壊、停止させる事ができました。ただ残りわずかとなった時にはこちらも戦える者がおらず……」
「そうか、よくやってくれたな。三百相手にそれだけの戦果は見事なものだ。それでどうやって倒したんだ?」
「ほとんどは地の利を生かした戦い方でございました。落とし穴や高い位置から岩を投げつけると言ったような単純な物ではございますが」
「なるほどな。中心核はどうだ」
「いえ、そこまでは。貫通させる事が難しく、鉄巨兵の魔力吸収に手を焼きました」
鉄巨兵にも魔力吸収の技術を施していたというのか。俺たちの大陸へ攻めてきた時の鉄巨兵から改良が進んでいるようだ。
「確かにあの魔力吸収は厄介だ。だが物理攻撃ならどうにかなるというのも判っている」
「いかがなさいますか、ゼロ様」
「そうだな……」
俺は近くにいた敵兵の首に腕を回して締め上げる。
敵兵の手にした剣を奪い取ると、筋力増強のスキルを発動させた。
「Sランクスキル発動、重筋属凝縮! 俺の全身の筋肉よ、全身が連動してその力を一点に集約させよ!」
俺は身体全体を使って力を溜め、剣を鉄巨兵に向かって思いっきり投げる。
「貫けっ!」
俺の投げた剣が鉄巨兵の胸の辺りに突き刺さり、その勢いのまま背中へと抜けた。
突き抜けた穴から鉄巨兵の中で破壊された操作の宝玉の欠片が見える。
「行ける!」
魔術系スキルであれば簡単に吸収されていた事だろう。
だが物理攻撃なら。
「流石はゼロ様、あれだけの貫通力を持たせる事ができるのはゼロ様だけでございますね」
ベルゼルの賞賛は嬉しいものの、逆を言えば俺が鉄巨兵を破壊しなければ誰も倒せないという事か。
少しの時間でいい。鉄巨兵だけに集中できればそれでも構わない。
「鉄巨兵には近付くな! 自分の命を最優先しろ!」
俺は鉄巨兵に剣を投げつけながら指示を飛ばす。
自由になった仲間たちであれば、敵兵に後れは取らない。
鉄巨兵さえどうにかなれば。
「あのでかぶつどもは俺に任せろ!」
俺は鉄巨兵に向かって突進した。
【後書きコーナー】
いつもお読みいただきありがとうございます。
新年あけましておめでとうございます。今年もどうぞよろしくお願いいたします。
さて、結局短絡的に騒ぎを起こして救出に走ったゼロたちですが、そう簡単に行くのでしょうか。
正直なところ私にも判りません。
そう思うと、執筆時は行き当たりばったりですが、その分私も次の展開がどうなるのか、楽しみでワクワクします。
TRPGのシナリオをセッションでやる感覚といいますか、皆さんと一緒にこの冒険の世界を楽しんでいけたらと思っています。
引き続きよろしくお願いします。