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レイピアの使い手

 俺たちの露店は多少荒らされていたものの、壊滅的とまでは言えない。何より干し肉や毛皮など、主力商品は荷馬車の中に置いてあり、店頭に出していた物が少し痛んだ程度だった。


「ラングレンの本拠地は壊滅させたぞ。後ろに見えるあの煙はその結果だ」

「なんだって、じゃあドルフィンは……」

「ああ、俺が焼き捨てた。残念だったな、親玉をやっつけちまって」

「そうか、それなら仕方がない。後で確認させよう」

「確認だ? 悠長なことを言っている。俺たちの店をこんな風にしたのならその礼をしなくてはな」


 俺は近くに転がっていた角材をつかんで構える。


「待て、これだから男は単細胞で嫌になるんだ」

「なんだと」

「やると言うなら相手になるぞ」


 モンデールは腰に下げていたレイピアを抜いて構えた。貴族の剣術でよく見る形だ。


「ゼロ、待って! この人は私たちを助けてくれたの! モンデールさんも剣を納めて!」


 ルシルが俺の腕にしがみつく。


「どう言うことだ?」

「モンデールさんがチンピラたちからお店を守ってくれたんだよ」

「なに、じゃあそのチンピラたちっていうのはどこに……」


 俺の質問にモンデールが答える。


「もう商人ギルドからの通報で警備隊が連れて行ったよ」

「そ、そうなのか、すまなかった」


 俺は手にした角材を放り投げる。


「俺はてっきりお前がラングレンの連中とつながっているのかと勘違いしていた。そうではなかったのだな、助かったありがとう」


 俺は素直に謝って頭を下げる。


「ほう、己の非を認めるとは男にしてはマシな奴だな」


 モンデールもレイピアを鞘に納めた。


「一応さっきの話を詳しく聴きたいから、商人ギルドへ来てもらえるかな。場合によっては警備隊の詰め所にも行ってもらうことになると思うが」

「判った、協力しよう」


 店をシルヴィアとカインに任せ、俺とルシルがモンデールについて行こうとした。


 耳の奥に違和感がある。敵感知センスエネミーが少しだけ発動した。実に弱い痛み。


「うっく!」


 俺の前を進もうとしていたモンデールがうめく。


「モンデール様っ!」


 シルヴィアの叫び声がモンデールの苦しそうな声に重なる。

 仰向けに倒れたモンデールの胸に矢が刺さっていた。


「狙いはモンデか!」


だから敵感知センスエネミーが弱かったのか。


「まだ残党が……あそこかっ!」


 屋根の上に弩弓を持った男がいる。

 俺の手から氷の槍が飛び出して、いくつもの破片に分かれてモンデールを狙った男に突き刺さった。

 男の身体を包むかのように氷の膜ができる。ゆっくりと屋根から落ちた男の身体は、地面に激突すると同時に粉々に砕け散った。

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