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枯らす要塞

 上空に逃れてよく判る。地下の大要塞がどれだけ大きかったのかという事を。

 アガテーがその様子を漏らす。


「砂漠の広範囲にわたって巣がはびこっていたようです。そこかしこに陥没した部分が見えますが、あれは全て地下の洞窟が崩壊した事によるものです」

「だからかぁ……」


 重ねるようにしてアラク姐さんがつぶやいた。


「どうしたアラク姐さん」

「何ね、昔はこんな砂漠じゃなかったんだよ。あの石の遺跡も草原の中にぽつんと建っていてさ、アラク姐さんたちも暗くて地下水が豊富だったからあそこに棲み着いたんだよね」

「そうなんだ……なんだルシル、何か聴きたい事があれば」


 そこへルシルが割って入る。


「だってあの砂漠はかなりの時間が経たないとああはならないでしょう? アラク姐さんっていつからこの地にいたのよ」

「そうねえ、アラク姐さんとしては人間の暦なんて判らないから、暑い時期と寒い時期が二十回は過ぎたくらいだろうかねえ」

「およそ二十年くらいって事ね……。ねえゼロ」


 ルシルの不思議そうな視線が俺に向かう。


「二十年くらいで、いえアラク姐さんが棲み着いてから二十年とするなら、砂漠化したのはここ数年、長くても十年程度って事よね」

「早いな、これだけの広範囲に砂漠が広がるというのは」

「そうなのよ。それにあの地下大要塞でしょう……」


 俺にもルシルの違和感が伝わった。


「あの女王虫がこの地に棲み始めてから急速に砂漠化が広がった……」

「地下を拡張すればする程、地上が枯れていったって思えるよね」

「それがあの女王虫のせいだとすれば」


 俺は女王虫が吐いた言葉が気にかかる。


「神、と言ったなあの女王虫」

「そうね。何かの比喩かしら」

「アラク姐さん、あの女王虫とかとは接点を持っていたりはしないのか?」


 アラク姐さんは首を横に振って否定した。


「アラク姐さんにはよく判らないんだよ。あんなに深い層まで行った事なかったしね」

「確かにかなり深かったもんな。引っ張り出すのに苦労した」


 そうなると他に情報を持っていそうな奴と言えば。


「ねえゼロ、やっぱり向かうの?」

「そうだ。もう一度凱王と話をしてみない事にはな。あいつなら何か事情なり情報なりを持っているはずだ」

「でも今まで戦ってお互い傷つけ合ってきたから」

「だが女王虫との戦いでは少なくとも敵対はしないで済んだからな。まあ上手く行かなければその時はその時だ」

「逆にトリンプを連れて行っちゃうの、危険じゃないかなあ」


 小さくなっているトリンプが心配そうに俺を見る。


「交渉するにもトリンプがいると助かるところがあると思っている。それに俺が凱国へ乗り込んだとして、コームの町にトリンプをおいていたら奴だとトリンプを狙いにかからんとも限らないからな」

「そうね、ゼロと一緒の方が安全と言えば安全なんだけど……」


 トリンプを見ているルシルが難しい顔をした。


「どうしたルシル、何か気にかかる事でもあるのか」

「そうねえ……」


 ルシルは一息ついて答える。


「ゼロの方が安全じゃないかもしれないかな、ってね」


 意味深な笑いを見せるルシル。それってどういう意味だ!?

 俺はワイバーンの疾駆する高空の風を身体に受けて、少し身震いした。

 おかしいな、寒さなんて感じないはずなのに。

【後書きコーナー】


 お読みいただき、ありがとうございます。


 地下探索編も終わりですね。久し振りのダンジョンだった気がします。

 閉鎖空間は行動が限られて面白いのですが、その中でも光の採り方とかギミックを考えるところは楽しかったです。

 実際には洞窟探検、崩落やガスの危険があってなかなか奥にまで行けなかったりしますけど、小説だとどんどん危険な所へ突入できるので、それも楽しさの一つではありますね。


 お楽しみいただけると嬉しいです。そして作者のモチベーションにつながりますので、面白い、続きが読みたいと思われましたら、是非評価をお願いします。


 また次話でお目にかかります。それでは。

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