びっくりどっきり中からいっぱい
俺はウゾウゾと動き回る巨大な虫に剣を叩き付ける。
半透明の腹部は剣の衝撃を受け止め、弾き返そうとした。
「だが魔力をまとった剣の力、これくらいで止められると思うなよ!」
俺は力を込めて女王虫に剣を突き刺した。
「とくと味わうがいい! 死の恐怖と共にな!」
そのまま剣を抜きながら腹部を斬り割く。
中から白いドロドロとした液体が噴き出して地面を塗らしていった。
「ゼロ、まずいよこれ!」
ルシルが悲鳴を上げる。
俺もその状況を見て背筋が寒くなった。
「中から……いっぱい……」
トリンプも言葉が上手く出せないでいる。
「イモムシみたいな白いにゅるにゅるが……いっぱい、むにゅむにゅしてる……」
トリンプは青ざめた顔で口を押さえた。
女王虫の腹から出てきた蛆のような幼虫の大群が押し寄せてくる。
「こいつ、斬っても斬ってもきりがないぞ!」
「ゼロ、トリンプ、火よ! 炎よ!」
「よし……SSランクスキル豪炎の爆撃! 焼けよ爆ぜよ!」
俺の放つ爆炎が蛆の大群を焼く。
虫の焦げる臭いが辺りに充満する。
「ほらっ、凱王! あんたも少しは役に立ちなさいよ!」
ルシルが遠くで縮こまっている凱王に発破を掛けた。
「そ、そんな事言っても、ラスブータンが首だけになっちゃったんだからねえ、もうぼくの身体を造れないんだよねえ」
「うるさい黙れっ! 泣き言は戦ってから言いな! ほれっ!」
ルシルは凱王に駆け寄るとその背中を蹴飛ばす。
「うわっ、ちょ、酷いねえ」
「それが嫌ならとっとと戦う!」
「はいはい……」
凱王はしぶしぶ棒きれを持ち出して足下に寄ってくるイモムシを潰しにかかる。
トリンプも溢れてくるイモムシを炎で焼いていく。
「危ないっ!」
俺はルシルに体当たりをしてそのまま地面に押し倒す。
「なっ、ゼロ!」
俺が倒れた上を女王虫の鎌のような脚が素通りしていった。
「イモムシばかりに気を取られてしまったな……。ルシル、電撃を頼む!」
「電撃?」
俺の下敷きになった状態でルシルが答える。
下敷きと言っても俺が腕で支えているので潰される事はないのだが。
「電撃なら奴の攻撃も狙い通りにはならないだろう」
「動きを混乱させるのね、判った! SSランクスキル爆雷煌ォ!」
空気中から雷撃が女王虫に落ちる。
一瞬その巨体を大きくのけぞらせて動きが止まった。
「今だっ!」
全身がしびれている状態の女王虫に駆け寄り、大きく跳躍をする。
目の前に虫の複眼が見えた。
「ここっ!」
俺は渾身の力を込めて覚醒剣グラディエイトを女王虫の頭に叩き込んだ。
俺の剣は虫の頭に当たりはしたが、分厚い油膜のような物で弾かれてしまう。
ヌルッと滑った剣が女王虫の肩口に食い込む。
「だったら、そのまま……!」
俺は自分の身体が落下する勢いも使って肩口に刺さった剣で斬り割いていく。
「グ……ギョギョギョギョギョ!」
金切り声を上げる女王虫。
その鳴き声の中で剣を引き抜くと、斬られた側の虫の半身がだらりとぶら下がった。
傷口から体液が溢れ出て、周りで燃え続けるイモムシどもに降り注ぐ。
「ふぅ」
俺は着地を決めて女王虫の様子を見る。
半身がもがれてそれでももう半身の脚がうごめいていた。
だが俺はもっと異質な物を見つけてしまう。
「おいおい、これは何の冗談だ……」
俺の額から汗が一筋流れた。