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抜け道作戦

 俺たちは虫の巣穴を深く深く掘り下げていく。凱王とラスブータンも加えた変則パーティーだ。


「ゼロ~、何層くらい行ったかなあ」

「俺が数えているだけでも五十層は進んだと思うが」


 深く潜れば潜る程、虫の大きさも強さも数も増していく。


「どうしたね勇者くん、もう……音をあげちゃっているのかねえ?」

「凱王、お前こそ息が切れているどころか、その身体何体目だよ」

「三体目……かねえ」

「使いすぎだろ」


 軽口を交えつつ、次々と虫の巣を潰して下層へと進む。


「潰しても潰しても次から次へと湧いて出てくるな」

「あれだけの大群を生み出すんだもの、もっと凄い数の卵があっても不思議じゃないよ」

「だよなあ……」


 俺は六十九層までで降りた階層を数えなくなった。


「どれだけ進めばいいんだか……」


 虫潰しが作業として延々と続いていく、そんな気持ちになっている。

 凱王はまた一つ身体を作って乗り換えていた。


「ああっ、もう面倒だ!」


 俺は一声吠えて覚醒剣グラディエイトを構え直す。


「どうしたんだ勇者くん、急に大きな声を出したねえ」

「おい凱王!」


 俺が凱王に噛みつくとラスブータンがそれに反応する。


「おいとはなんだ凱王様に向かって!」

「うるさい首だけ坊主め!」

「く、首だけ坊主……!」


 ラスブータンは顔色を赤くしたり青くしたりと忙しく変化させた。


「要するにこの虫の巣を完膚なきまで破壊し尽くしてやればよいのだろう!」

「ま、まあそうだが。これだけの規模の巣穴だ、そう簡単に行かないからこうやってぼくたちも苦労しているんだからねえ」

「ゼロしゃん、どうしたの?」

「ゼロさん……疲れてどこかが飛んでしまったのでは……」


 凱王もトリンプもアガテーも、俺が吠えた事に驚きを隠せない。


「はぁ……」


 ルシルだけがため息をついている。


「初めからそうしておけばよかったのよ」

「おいそこな魔族の娘よ、どういう事かねえ」


 あきれ顔のルシルに凱王が問いかけた。


「敵に自分の力を見せるのが嫌だったのか、敵と一緒に行動している内に効率よく戦う事が判らなくなっちゃったのか、そんなところでしょう?」

「ルシル、馬鹿を言うな。いくら俺でも規模が把握できない程の巣穴を力任せに潰せるとは思っていないぞ」

「じゃあどうするの?」

「階層を進んでいく事でどの辺りに下の階層へつながる穴があるかを理解した。例えばこの階層なら……あの位置だ」


 俺は計算した位置を指さす。

 そこには次の階層へと続く穴が見えた。


「あら。私も穴の法則性はあるかな、って思っていたけど。やるわねゼロ」

「伊達にぐるぐる回ってないからな」


 俺たちは周りの卵を潰しながら穴まで移動する。


「虫だって地上に出なくてはならないとすれば、階層ごとに抜け道はどこかにあるって事だ。その法則さえ見つけてしまえば……」

「見つけてしまえば?」

「まあ見てな」


 俺は穴に向かって手を伸ばす。


「Sランクスキル発動、風炎陣の舞(フレイムストーム)! その怒れる炎よ地を這い壁を伝い天井を舐めまわして空間を満たせ!」


 爆発をしないように注意を払いながら炎を穴に送り込む。

 ところどころ通気口や出入り口となっている穴から炎が噴き出した。


「まだまだ、地下の地下まで炎で埋め尽くして女王虫をあぶり出してやる!」

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