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火柱と肉人形

 ダンゴムシが陸に乗り上がる。俺たちもダンゴムシから降りて大地に立つ。


「ここはしっかりとした地面みたいだな」

「でも、おっきい卵がいっぱいだよ……」


 ルシルが言うように、辺り一面は人の背丈程もある草で覆われているが、その合間に青白い卵がそこかしこに見えていた。


「さっきの蜘蛛女の時とはまた別の卵みたいだ。蜘蛛の巣がないし殻の様子も違っている」

「ゼロしゃん、トリンプの炎で焼いちゃう?」

「まだ……待て!」


 俺は手でトリンプの動きを抑えようとする。


「ぴにゃん!」


 トリンプが変な声を出す。


「ん……」

「ゼロ~」


 俺の左手はトリンプが動き出さないように身体を押させている。

 その手のひらには柔らかいものが。


「その手をどけなさいよ」


 ルシルの視線が痛い。

 俺は慌ててトリンプの胸を触っていた手を引っ込めた。


「こ、これは不可抗力でだな……」

「ふ~ん」


 俺は咳払いをしながら言い訳じみた事を口走る。


「別にいいのに……」


 トリンプは顔を赤らめながらもつぶやいていた。


「陸地の奥で……光が見えます!」


 アガテーが注意を促す。

 俺たちはアガテーが見ている方を目で追う。


「炎?」

「トリンプやってないよ~」

「別にトリンプの事を疑っていないさ。でもあの火柱は……」


 俺たちは気配を抑えながら火柱の方へと向かった。


「ゼロ! 危ない!」

「おう!」


 バキバキと音を立てながら俺たちに向かってくる虫が何匹か現れる。

 その中の一匹が俺たちを敵と認識したのだろう、牙を鳴らしながら食らい付こうとしていた。


「まずこいつらを片付けてからか」

「そうね、あっちの火柱に気付かれてしまっても仕方ないわよね」

「だな! Rランクスキル氷塊の槍(アイススピア)!」


 俺は右から来る虫を剣で斬り払って、正面にいる巨大なダンゴムシを氷塊の槍(アイススピア)で貫いた。


「トリンプも! 燃えちゃえ!」


 トリンプは炎を出してすり寄ってくる虫を焼き払う。

 アガテーも影に隠れながら羽虫の羽を切り落としたりバッタのような虫の脚を切り裂いたりと、戦力を削いでいく。


「ここで出てくる虫は町を襲ってきた甲虫とかと同じだな!」

「虫を造り出しているのがここなのかもね!」

「よし、この辺りの卵も一斉に焼き払うぞ! トリンプ、やってくれ!」

「うん!」


 制限を解除されたトリンプは手当たり次第に虫も卵も焼いていく。

 奥に見える火柱よりもこちらの方が派手に燃えているようだ。


「あっちの火柱は放っておこう。俺たちの戦いに集中するぞ!」

「うん!」

「あいっ!」


 地下が一気に明るくなる。俺たちの炎が陸地を舐めまわしていく。

 その炎が地底湖の水面に反射して全体が燃えているように見えた。


「なんだなんだ、騒がしいと思ったら勇者くんだねえ!」


 いつの間にか遠くにいた火柱を作っていたやつだろうか、それが声の届くところにまで近付いていたのだ。


「なんでお前がここにいるんだ!」


 俺は話しかけてきた男に炎の槍(フレイムランス)を放つ。

 だがその男は俺の放った炎を吸収してしまう。


「凱王!」


 俺に呼ばれてもその男は特に気にするでもなく、辺りの卵を焼き続けていた。


「まあそういきり立たなくてもいいよねえ。勇者くんたちも目的は同じなんだよねえ?」

「知るかっ! お前となれ合うつもりはない! ここの虫どもと共にお前もここで焼いてやろうか!」

「だとしてもそれは無駄になるねえ」

「お前……また思念だけ肉人形に飛ばして……」

「ご明察、流石は勇者くんだねえ!」


 本体はどうせ国でのうのうとしているのだろう。思念だけを飛ばして現地で悪巧みをしているのだ。


「だからぼくを攻撃しても本体には影響ないからねえ。無駄だよねえ」

「くっ……」


 俺は勝ち誇った顔の凱王に怒りを覚えたが、確かにこの肉人形を潰したところで奴にダメージは与えられない。


「だからねえ、ここは一つどうだろう。共闘してみては、ねえ?」


 凱王から意外な提案が出された。

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