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駆除、駆除、そして駆除

 どうも女の子たちには虫の居所が悪い、という事ではなく苦手な種類の虫がいるという事のようだ。


「だからと言ってなあ、虫どもは向かってくるから駆除しない事には先に進めないんだが」

「ほんとごめんなさい……」

「ごめんです……」


 アガテーもトリンプもしおらしい態度で俺の後をついてくる。


「まあ女の子だからね、虫が苦手って言うのも仕方がないよ」

「ルシルは平気なのか?」

「私は別に。魔族には昆虫に近い種族もいるからね」


 ルシル自身は特に気にしていない様子だが。


「でもトリンプも魔族だろう? その角、魔力の角だよな」

「え、ええ。そうなんだけど、トリンプあんまり自分の事知らなくて」

「そうなのか? それって」

「トリンプ、昔の記憶……ないの」


 知らなかった。

 トリンプは今でも子供のような背格好だが、以前の記憶が無いと言う。


「記憶喪失か……」


 トリンプは小さくうなずくだけだった。


「ま!」


 俺はあえて大きな声を出す。


「過去なんてどうでもいいさ! 今は俺と、俺たちと一緒にいて、ここにいるのがトリンプなんだからな!」

「ゼロしゃん……」


 トリンプは大きな目に涙を溜めて俺を見る。


「別に俺たちはそれまでの事をどうこう言うつもりはない。そんな事関係ないしな。それよりも大切なのは、俺たちと一緒に戦ってくれるって事だ。俺たちの仲間として、俺たちと一緒にな」


 トリンプが笑顔になった。

 その拍子に涙が頬を伝うが、気にはならない。


「うん! トリンプ、ゼロしゃんの仲間で頑張る!」

「そっか。それはありがたい」


 俺は礼を言いながら飛び出してきた羽虫を炎で撃ち落とす。


「この先はいっぱい虫がいそうだぞ、皆、気を引き締めていけよ!」


 俺の掛け声に皆がうなずいてついてくる。


「でかい分だけ通路を通れる数は限られる!」


 俺は次々と這い寄ってくる甲虫を焼き払い羽虫を撃ち落としヌルヌルした奴を凍らせていく。


「大地を埋め尽くす程の量ではないからな! 湧いて出てくる奴を潰せばそれまでだ!」


 俺たちが通った後の通路は虫の死骸と体液で埋め尽くされていた。


「ねえゼロ」

「どうしたルシル」


 通路が終わり少し広い部屋のようなところへ辿り着いた時、ルシルが歩を止めて俺に話しかける。


「あれ……先に行っていたアガテーだよね」


 ルシルが言うように、部屋の中央、天井から吊されている状態のアガテーがいた。


「大丈夫かアガテー!」

「あ……ああ……」


 アガテーは言葉にならない。身体には真っ白い糸がグルグル巻きになっている。


「く……くも……」

「蜘蛛だって!?」


 アガテーが動く事もままならない状態でどうにか言葉を発した。


「ゼロ! 近くに蜘蛛がいるよ!」


 ルシルの焦りを帯びた声。

 俺は周囲に気を巡らす。


「アガテーが隠密入影術(ハイドインシャドウ)を使っていてもつかまったんだ……。トラップか」


 俺の足にも何か粘着質の物が貼り付いた。


「くっ、これか!」


 俺の足が吊される。逆さまになって天井へ引っ張り上げられていく。

 そして俺の向かう先には。


「蜘蛛、か!」


 天井からぶら下がっている蜘蛛の八つの目が俺を見ていた。


「俺を捕らえようとはな、なめられたものだ! SSランクスキル発動っ! 豪炎の爆撃(グレーターボム)を食らえっ!」


 足が糸に絡まっている状態だが手は自由に動く。

 爆炎を天井に張り付いている蜘蛛に向けて放出する。炎は蜘蛛と周囲にある糸を焼き切る。

 俺とアガテーは糸が焼け切れて落下するが、俺は体勢を立て直してアガテーを抱きかかえながら着地を決めた。


「これくらいで俺を食えると思うなよな」


 啖呵たんかを切る俺の背後に焼け焦げた蜘蛛が落ちてくる。

 大きな音を立てて落ちた蜘蛛は脚をひくつかせているが、既に焼け死んでいた。

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