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石の神殿

 神殿、というのも俺の想像だ。砂漠の中にある石造りの建物というだけの代物だが俺にはそう思えた。何か神聖なものを感じるというところか。


「虫の足跡を辿るとここに行き着いた訳だが」

「そうですねゼロさん、上空から見ても轍のように虫の足跡がずっと残っていましたから」

「俺には砂漠の風紋しか見えなかったがよく判ったなアガテー」

「それはもう、隠密技を極めますと人の気が付かない所も見えてくるものですよ」

「流石だな。そうなればこの石の建物の中に虫の棲み家がある訳だが」


 俺は剣を抜き払い入り口らしき建物の穴に向かって歩き出す。


「ウィブ、さっきも言ったようにルシルの思念伝達テレパスが届く範囲で適当に休んでくれ」

「儂は中には入れないからのう、承知するしかないのう」

「済まんな。地下深くまではワイバーンの巨体では無理があるからな」

「判っているからのう」


 そう言いながらもウィブは少し不満そうだったが、こればかりはそうもいかない。

 物理的に無理だからな。


「ルシル、行くぞ」

「ええ」

「アガテー、トリンプ、準備はいいな」

「はい」

「うん!」


 俺たち四人はワイバーンのウィブを砂漠に置いて建物の中に入っていく。


「ねえゼロ、中は少しひんやりするね」


 少し行っただけでももう外の光は入ってこない。

 確かにルシルの言う通り、あれだけ強かった日差しが入らないだけでも気温がかなり違う。


「砂漠と違って涼しくなった上に湿度も上がっているように思える。虫が棲息するには適度な環境下もしれないな」


 それを聞いてアガテーが地面を探る。


「多分これは食べ残し、それに……虫の糞ですね。ここを通過していたのは間違いないです」

「元々は誰かが建てた物なのだろうが、それがいつの間にか虫に占拠されていたようだな」

「ところどころ蜘蛛の巣のようなものもありますので」


 アガテーが壁に触れながら様子を伺う。ルシルもその姿を見て警戒を強めた。


「あの大群がこの中にいるとしたら、気をつけなくちゃね」

「そうだな。探索と警戒に関してはアガテーに任せるが、いざ戦闘となった時には俺とトリンプで対処する。俺が前衛に出てトリンプが補佐につく。ルシルは回復役として魔力を温存しておいてくれ」

「はい」

「いいわ」

「ルシルにも戦闘に加わってもらいたい気持ちはあるが、回復スキルを使うとなると俺の勇者スキルもあるが、俺が回復役に回ると戦力が下がってしまうからな」

「そうね、回復なら任せてよ」


 ルシルが張り切っているところでトリンプがしおれた表情を見せる。


「トリンプは回復スキル使えないから……」

「別にそれで構わんさ。トリンプは攻撃系スキルで虫を撃退してくれ」

「うん!」


 俺の言葉にトリンプも元気を取り戻す。


「虫が出てもトリンプの炎で燃やしちゃうね!」

「いやそれは待て。こんな狭いところで火なんて使ったら息ができなくなりかねない。鉱山で火の扱いは十分注意しなくちゃならんと言う事を学んだからな」

「そうなんだ……。じゃあ、氷使う。虫、寒いの苦手だよね」

「その通りだ。冷気で動きを止めてやってくれ。そうすれば俺も戦いやすい」

「うん! そうするよゼロしゃん!」


 トリンプのやる気が出てきたところで、俺たちはどんどんと建物の奥へと進んでいく。


「下りの傾斜が出てきたな」

「そうね、結構急勾配だから地下に潜って行っているみたいだけど」

「建物の高さにして五、六階程度の深さには潜っただろうか」

「う~ん、それくらいは行っていてもおかしくないわね」

「だとすればそれまで潜ってもまだ虫らしい虫が出てきていないのはおかしくないか?」

「そう? 出払ってしまったからもうここにはいないのかもしれないし」

「そう……だと楽なんだがな」


 俺がそういった矢先、空気を震わせる音が廊下の中に響き渡った。


「羽虫……甲虫か!」


 たいまつの光が俺の剣に反射して暗闇の中に光の筋を作る。


「手応え、あった!」


 重量のある衝撃が俺の手に伝わった。

 それと同時に地面へ落ちる固い虫の塊。

 噴き出す汁。


「来るぞ! みんな構えろっ!」


 石造りの廊下に俺の声がこだました。

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