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後顧の憂い

 鉄巨兵ゴーレムは大きいだけあって機動力には難があるものの、防衛という点や移動を考慮しない攻城戦であれば圧倒的な戦力として期待できる。


「それにこの鉄巨兵ゴーレムは西の大陸、トライアンフ大陸から来た兵器を鹵獲ろかくした物だから、こちらの大陸ではもっと大量に投入されているかと思っていたんだけど、ゼロ君の話じゃあそうでもないみたいね」

「ああ、戦に投入すると言うよりは特殊な作戦に使っているのかもしれないな。用途としては同じように考えるものだとすると、帝国の本拠地では防衛線に鉄巨兵ゴーレムを投入している事も考えられるが」

「あたしならそうするけどね。まずはこの十機だけどどう運用するの?」

「そうだな」


 俺は地図をイメージしながら戦力の展開に頭を使う。


「戦力を集中させるとしても全軍をもって帝国に侵攻する訳にもいくまい。そうなるとどうしても攻撃と守りに分けなくてはならない」

「あっちの……ブラッシュは放棄するのよね?」


 ピカトリスの質問に俺はうなずいて応える。


「折角落とした町だがそこまで防衛に戦力を割けないだろう」


 俺の言葉を継ぐようにベルゼルが出てきて発言した。


「このコームの町はゼロ様のご活躍もありましてこうして隔離された拠点として守る事が可能となりました。ですがブラッシュは平原に存在するただの町と聞いております。それではクシィと同様、あの虫たちが襲ってきた場合に対処できませぬ」

「虫の話は聞いたわ。この町の周りにも死骸があるからその凄さは想像できるけど。ゼロ君がいてもそこまでしなくちゃならないくらいなのね」

「ピカトリス殿、たとえゼロ様とて距離のある町を同時に防衛する事はかないませぬゆえ」

「それもそうよねえ。ベルゼルちゃんでもクシィの時にコテンパンだったって事だものねえ。あ、悪気があって言っているんじゃないわよ?」


 ピカトリスは形の上では取り繕ったりしているようだが、二人とも自分なりの正義を持っていてそれに絶対の自信と基準を持っているだけに、双方悪意の塊にしか見えないような所もあるのだろう。


「ともかくだ、ピカトリスにはこの鉄巨兵ゴーレムを使ってコームの町を防衛して欲しい。それと陸路を進むブラッシュからの引き上げにも護衛として使いたいが、三機をベルゼルに渡してくれないか。ベルゼルは鉄巨兵ゴーレムも使ってブラッシュの引き上げを指揮してくれ」

「判ったわゼロ君」

「承知いたしました、ゼロ様」

「じゃあベルゼルちゃん、これ。鉄巨兵ゴーレム操作の宝玉(コントローラー)三つね。あの右側にある黒い三機を使ってくれて構わないわ」

「使わせてもらおう」


 ベルゼルはピカトリスから操作の宝玉(コントローラー)を受け取ると、指定された三機の鉄巨兵ゴーレムを操り始める。


「ほほう、これは面白い。こんな簡単にあの鉄巨兵ゴーレムを動かせるとはな」


 ベルゼルは意のままに鉄巨兵ゴーレムを整列させたり瓦礫を持たせたりして動きを確認していた。


「三機同時は凄いわね」

「そうなのか? ふむ……それではゼロ様、ワタクシはこれからブラッシュへ向かいます。一人でも多くの民を引き上げられるようにいたしますので」

「うん、頼んだぞ。ブラッシュではセシリアと合流してうまくやって欲しい」

「ははっ」


 ベルゼルは数人の魔族を引き連れて鉄巨兵ゴーレムと共にブラッシュへと向かっていった。


「後の事は任せて俺は帝国の本拠地を探るとしよう。あわよくばそのまま凱王を倒してしまうというのもいいだろうな」

「はっはっは、またゼロ君は冗談が上手いんだから」


 ピカトリスが俺の背中を軽く叩く。それにつられて周りの連中も笑顔になっていた。

 俺は別に冗談を言ったつもりはなかったのだが、まあよしとしよう。


「俺は少数で帝国へ向かう。途中、虫の出所を探りつつ行こうと思うが……ピカトリス、コームの事は任せる」

「判ったわ、ゼロ君が戻れる場所をきっちり確保しておくわね」

「ああ。それでは行くとするか」

「え、もう行っちゃうの? そんなに急がなくてもいいじゃない」

「相手は待ってくれないだろうからな」


 俺は身の回りの物を軽く集めると、共に旅立つ仲間たちへ声をかけに行った。

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