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突然の襲撃

 俺たちは身の回りの物を整理する。明日にはここを発ってどこか落ち着けるところへ行こうと思っていた。


「それにしてもゼロ、宝物まで持っていっちゃうなんて酷いわね」

「確かになあ、きちんと呪いを解けば何も問題ない財宝だったから、あれがあったらこれからの暮らしも楽になったんだけど。せめて聖剣グラディエイトだけでもあればなあ」


 聖剣グラディエイト。魔王を倒した剣。元から魔法の剣としてかなり強い武器だったが、俺が冒険の間に鍛え上げて、その上魔王を倒した時の魔力の吸収で世界に類を見ない伝説級の魔剣となった。

 使う者が使えば国の一つや二つはどうとでもなる代物だ。


「契約とかなんとか、こすっからい手を使うわね人間って」

「ははっ、そう言うなよ。俺もきちんと読んでいなかったしさ」

「獲物がいなくなれば猟犬は要らなくなる、っていうことね。まあいいわ、こんな国からはとっとと出て行っちゃいましょう。宝物の呪いなんか解いてやらないんだから」


 ルシルが腕を組んで怒った顔をする。

 そんな姿を眺めていたら、一瞬耳が痛くなる。俺のスキル、敵感知センスエネミーが発動した証だ。


「三、いや四か。ルシル、階段から上がってくる奴が四人。軽装だが足音からしてフル装備、先頭二人は抜刀してるようで階段の手すりに剣の柄を当てた音がした」


 俺は壁に掛けていた剣を取る。聖剣グラディエイトには遠く及ばない、予備で置いておいた安物の剣だが、今はこれで我慢するしかない。


「でも、四人くらいならいつものゼロならどうとでもなるでしょ?」

「そうだと思うが、どうも王宮を出てから身体のキレがいまいちな気がしてな」

「気のせいじゃない? 大丈夫だよ」

「俺の取り越し苦労だったらいいけど」


 俺は剣を抜くと、扉から少し離れたところで構える。


「静かに、なったな」


 だが敵感知のスキルはビンビンに発動中だ。扉の向こうに四人が息を潜めて待ち構えているのが判る。


「先手必勝っ!」


 俺は扉の前で聞き耳を立てていた奴ごと扉を蹴り倒す。一人目は壁に後頭部を打ち付けて口から泡を吹いている。その口に膝を蹴り入れると前歯が数本折れる感触があった。

 続いて姿勢を低くした状態で廊下に立っている奴にショルダータックルをかける。下から突き上げるように肩を入れると、そいつは肺の中の空気を全て吐き出して目を白黒させながら仰向けに倒れた。


「次っ!」


 廊下で立ちすくんでいる二人に斬りかかる。一人は手首を、もう一人は手の甲を剣で切り裂いて剣を持てないようにすると、二人とも斬られた箇所を押さえてうずくまる。


「これで四人、無力化はできただろ……!」


 廊下の先から短剣が飛んできた事に気が付いた俺は背を逸らして避けようとした。身体をひねりながら後ろへ飛ぶような形で躱そうとするが、短剣は俺の左目近くの頬から額までを切り裂く。


「しまっ」


 失明はしていないと思いたいが。顔は出血量が多いからか目の中に血が入って視界がぼやける。片目では遠近感が取れない。


「五人目、奥にはまだ……ルシル、退くぞっ!」


 撤退を決断した俺は部屋に戻るとルシルの手を取って窓から飛び出した。

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