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魔力の溶かし方

 俺は女言葉を使う男の後に続いて外へ出た。


「ピカトリス、あれか?」

「そうよ! 持ってくるのに苦労したんだからねっ!」


 打ち合わせの最中に入ってきたのはピカトリスだ。東の大陸、レイヌール大陸で確保した鉱山から産出した鉄を使って鉄巨兵ゴーレムを製造させていた。


鉄巨兵ゴーレムが十体もか、凄いなピカトリス!」


 俺たちの目の前には空にまで届きそうな鉄の巨体が港に並んでいる。

 鉄巨兵ゴーレムが整列した姿は威圧感があった。


「それにあの船……」

「折角鉄がいっぱい採れたでしょう? だから鉄張りの船にしちゃったのよ~!」


 ピカトリスは自慢気に胸を張る。

 鉄巨兵ゴーレムを運搬するだけのいかだのような船が連なっているだけかと思ったが、船の周りにフロートを付けていて浮力は稼いでいる。そしてそれらは全て鉄板で覆われていて鉄巨兵ゴーレムが上に乗ってもその重量に耐えられるようになっていた。


「ピカトリス、魔吸石ドレインクリスタルは知っているな?」

「もちろんよ。この鉄巨兵ゴーレムを動かしている操作の宝玉(コントローラー)の研究だって進んでいるんだから」

「それでなピカトリス、手に入れる事はできなかったのだが、こちらの大陸では魔血石ブラッディソウルという物があってだな」


 俺は魔血石ブラッディソウルに関係するラスブータンとの戦いを説明する。


「何よそれ! 魔血石ブラッディソウル? すっごく面白そうなやつじゃない!」

「だがその生成方法が魔族を溶かして造るなんていうんでな」

「はぁ……この大陸の連中も馬鹿ねえ」


 ピカトリスは呆れた顔でため息を吐き出す。


操作の宝玉(コントローラー)の技術があるからどれ程の高度な国なのかと思ったけど、そうでもないみたいね。言われてみて判ってきたわ、操作の宝玉(コントローラー)魔血石ブラッディソウルに近い技術って事みたいだわね」

「ほう」

「でもあたしだったら魔族を溶かすなんて野蛮な事はしないわよ」

「だが魔血石ブラッディソウル魔吸石ドレインクリスタルとは違って瞬時に魔力を吸収したり放出したりできるんだぞ」

「その即時性は魅力かもしれないけど、それも近いうちに何とかなるわ。それよりも計画的に生産する方法だったりが大切で、そんな資源として魔族を使うなんて……」

「人道的にあり得ない、か?」

「そんな事ないけど、そうしちゃうと非効率で不純物がいっぱい入るから。それに美しくない! あたしなら純粋に魔力だけ抽出して結晶化させる方法を使うわね。まあそうしたらその魔族は魔力やスキルを使えなくなっちゃうかもだけど」

「そんな事ができるのか? もしかして……角か」

「ご明察、ゼロ君。高位の魔族なら角に魔力を集約させてそれを移設する事も可能よね」


 確かにピカトリスの言うように、前にもルシルが角を奪われて魔力制御が上手く行かなくなった事があった。


「それなら魔族を埋めたり溶かしたりなんて……」

「そんなもったいない事はしないわね。どうせなら魔族……いえ、魔力を持っている者は魔力を奪ってもまた回復してくれるから、継続的に搾取した方が長期的に見て効率がいいのよ」

「相変わらず物騒な考えだが、まあ俺に不利益がない限りは認めざるを得んな」


 ピカトリスは俺を抱きしめる。


「うんうん、ゼロ君も丸くなったわねぇ、よしよし」


 俺よりも背の高いピカトリスがそのやせ細った腕で俺の頭をなでた。

 肋骨の浮き出た男の薄い胸板がゴリゴリと痛い。

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