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虫の足跡を逆にたどれば

 クシィ攻略に向かったベルゼルたちには、ひとまずその場で休憩してもらう。

 大きな谷を越えてコームの町に行くには橋ができていないからな。

 こちらの崖からコームの町がある島まで距離にして百メートルはあるだろうか。ベルゼルであれば空中を飛んで超えられる距離だが、傷付いた遠征軍の生き残りではもちろん超えられない幅だ。


「ぐるっと迂回して海まで出ればそこから船を使ってコームの町に行く事はできるが、それよりはこちらの方が早いだろう。Rランクスキル発動、凍結の氷壁(アイスウォール)!」


 俺は地面に手をついてスキルを発動させる。

 俺の両手から放出された氷の塊が次々を成長して、見る間に氷の橋を造った。


「な、なんと!」


 ベルゼルがまたしても驚く。

 かなり魔力を消費するがこうして一時的にでも橋を造っておけば、この氷の橋を使ってきちんとした橋が造れるだろう。

 何もない場所で新たに橋を渡すよりはかなり楽にできるはずだ。


「流石はゼロ様、その無尽蔵の魔力とこれだけの物を形作れるその技量。このベルゼル感服いたしました」

「町の者たちにも手伝わせて橋を造るが、その前にお前たちは町で休むといい。遠征、ご苦労だった」

「は、ははっ。ワタクシは成果も結果も出せなかったにもかかわらず、そのお優しいお言葉。この命ゼロ様に改めて捧げる所存にございます」

「大袈裟な。それに命を捧げるにも何も、今ここで倒れられてはどうしようもないからな。まずは休め、いいな」

「はい……。ありがたき幸せに存じます」


 ベルゼルはむせび泣く風で橋を渡っていく。

 戻った兵たちもそれに続いた。


「続々と戻ってくるようだが、それでも遠征した中で生きて帰れた者はかなり少ない。ドレープの消息も今だ知れないという事だからな」

「虫の大群、あっちも酷かったって事だね」

「ああ。ほぼ同時に虫が襲ってくるとは、何か意図的なものを感じるが……」


 ベルゼルでさえあの状態だ。厳しい戦いだった事は想像に難くない。


「あちらこちらに虫の死骸があるな……。大きなものだと人間の数倍はある。確かにこんな奴に襲いかかられたらひとたまりもないだろう」

「それもあの数だもん。コームが無事だったのはゼロがいたからでしょ。他だったら全滅してもしょうがないくらいだよ」

「逆にベルゼルだからこそここまで落ち延びてこられたという事だな」


 ルシルは悔しさをにじませながらも素直にうなずいた。


「虫になんて……。ベルゼルが言っていたみたいにさ、私たち魔族にしてみれば操って当然の使い魔なのに」

「使い魔……。確かに命令を忠実に守っていたとも見えるな。ただの虫であれば何か衝撃があった時点で身を守ったり逃げようとしたり、何か動きがあるはずだ。だがそれが無かった」

「炎にも海にも、そのまま直進して行ったよね」

「そうだ。生物の本能ではあり得ない行動だと思う。とすると……」

「何者かに操られていた」


 俺はルシルの頭に手を置いて軽くなでる。


「それもあの数を、だ」

「だとすると虫がやってきた元をたどれば!」


 俺は力強くうなずいた。


「虫の出所を探そう」

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