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恩義には礼を

 俺の立ち回りを見ていた町の人たちが数人集まってくる。


「おいあんた、大変なことになるぞ」


 一人の老人が俺に小声で話しかけてきた。


「どうしたご老人。あんな輩がいくら来てもどうということもないが」

「そうじゃねぇ、そうじゃねぇんだよ。あいつらは自分たちをチームラングレンとか言ってこの地区を力ずくで好き勝手に暴れ回っている連中だ。町の者もすごく困っているんだが」


 老人はほとほと困り果てたような表情だ。


「自分たちで対抗したりはしないのか?」

「そりゃあしたさ。自警団を組織してラングレンに抵抗したりもしたが、奴らの親玉がまた強いのなんの、あっという間に返り討ちだ」

「そんな奴がのさばっていて、町の警備隊や衛兵とかはどうなっているんだ」

「町の警備隊ですら相手にならない始末でな、今は見て見ぬ振りだよ」


 どこでも悪い奴はいると思うがこれはよほどのことだろうな。


「なるほどな、町ですら手を焼いている暴力集団というわけか。どこの町にも暗部はあるものだな」

「だから逆らうのは得策じゃないってことだ。それだけが言いたくてな」

「そうか、判ったありがとう。だがご老人、どうしてそんなことを今日商売を始めた俺に言うんだ?」


 俺の問いに老人は懐から楊枝を取り出した。


「肉なんて食ったのもう何十年ぶりだったんでね。買ってやれないせめてもの礼、さ」

「あの時のお客さんか!」


 よく見れば俺が初めて試食をしてもらった老人だった。


「はははっ、もらっただけで買っていないからね、客じゃあないかもしれないけど。あれは本当においしかった」

「戻ったら試食をやろうって言った奴に伝えておくよ。本当はもっと食べてもらいたいんだけどな。そうだ、今度は小分けにしたやつを用意するよ。干し肉の塊一本では大きいっていうお客さんのために」

「それはありがたいね。もうこの歳になるとたくさんあっても食べきれないからね」

「ああ、それも話をしておく。ありがとう助かった!」

「いいやこちらこそ。でも気をつけてな、ラングレンの連中に目を付けられると、商売するのは難しいから……」


 心配そうに見ている老人と別れて俺はラングレンの連中が消えていった路地に入る。

 敵感知センスエネミーが薄れてきているがまだ目標は捉えている。新たに俺へ敵意を持って近付いてくる奴がいないおかげで、ラングレンの連中が放ったさっきの殺気、それがまだ残っている訳だ。

 方角が判れば特に迷うことはない。


「行き止まりとか回り道なんて俺には関係ないからな」


 壁や建物で行く手が遮られるが、俺は木や壁を蹴り上げて建物の屋根に上る。


「ほうら見えてきた」


 言いがかりを付けてきた三人の姿を視界に捉える。

 その三人は裏通りの中では少々大きな建物へと入っていった。

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