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ひとまず追い払え!

 俺はウィブから飛び降りて空中を落下していく。


「いつものアレで何だがな、お前たちには初見だから別に気にするな。SSSランクスキル発動っ! 重爆斬ヘビースラッシュ!」


 俺は抜いた剣を下に突きつけてスキルを発動させた。

 剣が地面に着くよりも先にスキルの効果が発生して落下の勢いを弱める。

 それ以上に俺の周りにいた連中たちには俺の攻撃が直撃した。


「そらよっ!」


 敵軍の中央に大爆発が起き、爆風が去る頃には俺を中心とした半径数メートルの窪地が作られている。


「な、なんだこいつ!」

「空から……空から降ってきやがった!」


 慌てふためく凱王軍。

 直撃を受けた連中は巨大な圧力で跡形もなく押し潰され、周りにいた奴もその爆圧で身体が粉砕される始末。


「生きながらえた者も無傷では済むまい」


 俺はゆっくりと立ち上がりながら鋭い視線を周りの敵軍に注ぐ。

 その様子を見て遠くで歓声が上がった。


「おお! ゼロ様が降臨なされた!」


 ベルゼルだろうか。指揮をしていた塔からの声が聞こえる。

 見ればこれもベルゼルの造ったものだろうか、貝殻から造られただろう動く骸骨(スケルトン)が町を守っていた。


「醜悪なのは殺した敵兵も動く死体(ゾンビ)として自分の兵にしてしまうところだな……」


 俺の独り言はベルゼルには聞こえないだろうが、得意顔になっている事は容易に想像できる。


「ベルゼル!」


 俺は町に向かって叫んだ。


「ゼロ様! ご命令を!」


 この喧噪の中ベルゼルの声は透き通った氷のように俺の耳に届く。


動く骸骨(スケルトン)動く死体(ゾンビ)を使って攻勢に転じよ! 俺が敵軍中央でかき回す!」

「承知つかまつりましたぁっ!」


 俺が危惧するでもなかったかもしれないが、ベルゼルがいれば町は守られていただろう。

 それも味方の被害を誰一人と出さずに、だ。


「さあそうとなれば俺もひと働きするか!」


 俺の振るう剣で周りの敵兵が吹き飛ばされていく。

 一撃で数人斬り刻まれていく姿を見て敵兵に恐怖の波が伝わっていった。


「おらぁ! これでもまだ攻め寄せようとするかぁ! 命欲しくなくばかかってこい! いくらでも相手になってやるぞ!」


 俺の威圧で雑兵どもは腰を抜かして倒れ込む。


「退けぇっ! 退却だぁ!」


 敵軍の指揮官だろうか、退却の指示を飛ばしている。


「そこか……」


 俺は声のする方へ剣を振り下ろした。


「Sランクスキル剣撃波ソードカッター! 斬り刻め、その指示する者まで!」


 俺の放った剣撃が敵兵をなぎ倒しながら指揮官を真っ二つにする。


「ひぃ!」

「駄目だ、俺たちには勝てねえ……」

「逃げろぉ!」


 この様子を見て雪崩を打って敵兵は引き上げていく。


「ゼロ様」

「おわっ!」


 いつの間にかベルゼルが俺の背後を取っていた。


「びっくりさせるな」

「恐縮です」


 何が恐縮なものか。


「それにしてもベルゼル、よく町を守ってくれた」

「お褒めにあずかり恐悦至極に存じます。ですが……」

「どうした?」


 ベルゼルは神妙な面持ちで答えた。


「クシィでは籠城戦に突入している模様でございまして、援軍を求める書状が届いております」

「あちらでも苦戦しているか……」

「いかがなさいましょう。クシィは凱王の直属軍は襲来していないようなのですが、いまだクシィ軍が健在であり攻め落とすにはこちらの損失も覚悟の上で攻め入らなくてはならず」

「そうだな、俺が籠城となった場合には援軍を待てと言ってしまったからな」


 ベルゼルははいともいいえとも言わずに俺を見ている。


「連戦となるが、クシィに向かってくれるかベルゼル」

「よろしいのですか? 敵は引いたとは言えまだ二万以上の兵が残っている様子」

「ああ、それは俺がどうとでもできるだろう。こちらを片付けたら俺もクシィへ向かう。それまでに動く骸骨(スケルトン)たちを上手く使ってクシィを攻撃しておいてくれ」

「ははっ、ゼロ様のご意向に異を唱えてしまい申し訳ございません。このベルゼル、クシィ攻め謹んで拝命いたします」

「そう固くなるなよ。だがまあいい、頼んだぞ」

「ははーっ!」


 ベルゼルは深々と頭を下げた。

 上空ではウィブが旋回しながら降下し始めている。


「ルシルがいればかなり楽になるからな……あ」


 ルシルはウィブに乗ったまま氷の槍を敵軍のど真ん中に放り込んでいった。


「流石はルシル様、事のついでとばかりに敵兵へ打撃をお与えになるとは」

「そうも言っていられないだろう。ほら……」


 凱王軍から反撃の矢を射かけられ、また急上昇するウィブ。


「いつになったら降りてくるのかな……」


 ルシルと敵兵の戦いを、遠目から見守っている俺だった。

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