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総督代理

 俺たちは無力化されたブラッシュの町を歩いている。


「戦力としては俺が壁を破ったところでほとんど無くなっていたみたいだな」


 俺の言葉にバルが答える。


「そうですね、もう戦う余力は無かったと思います。まさか凱王が出てくるとは思いませんでしたけど、宰相ラスブータンが最後の抵抗でした」


 そう話すバルにルシルが突っ込みを入れた。


「ねえ百人隊長、雷に打たれていた所はもう大丈夫なの?」

「ええ、ゼロ様の回復スキルのお陰でこの通りです」


 バルは力こぶを作って元気になった事をアピールする。


「それに圧政を敷いていたラスブータンがいなくなったのでこれ以上戦う意味も力も持ち合わせていません。あれだけの力を見せつけられてしまっては」

「そうか。だがバルが降ってくれたお陰で他の連中も理解を示してくれたようだからな、そこは感謝する」

「ゼロ様、何をおっしゃいますか。あなた様がいなければ俺も生き残った兵たちもこうして言葉を交わす事もできなくなっていました。血だまりの中に埋もれる死体の一つになっていた事でしょうから」


 バルは殊勝な顔でそう答えた。


「そうか、それならばいいのだがな。たとえ国を落としたとしてもそこに住む人までを消し去る訳にもいかないし、かといって全員を信服させるまでの時間もかけられないからな。お前のような奴がいる事自体が俺にとってかなり助かるのだが……どうだバル、仮とはいえお前がこの町を安定させてはくれないか」

「えっ、俺がですか!?」

「百人隊長として少しは人を動かす事には慣れてもいよう。軍事以外の事であれば補佐役は好きに選んでくれて構わん。気心の知れた奴を側につけるといい」


 俺としては歯向かわない相手であれば誰でもいいのだ。そうなるとそれなりに人望のある者がいて、その者が選んだ奴が町をまとめてくれるとありがたい。


「先の遠征で有能な人材が多く失われました。居残り、そして生き残っただけの俺が、町を治めるなんて……」

「難しいのであれば他の者に任せても構わん。そうだな、民に困窮を強いる事がないようにして俺の国に攻め入らないという事であればそれでいいのだ。不安があればコームの町にも俺の民がいるからな、応援を頼んでもいいぞ」

「シルヴィアだったらその辺りうまくやってくれそうだもんね!」


 ルシルが合いの手を入れたように、今は疲弊した町をどうにか治めてくれればそれでいい。発展かこれから少しずつ進めて行ければ。


「判りました、そういう事でしたら俺は総督代理としてこの町を預からせていただきます。改めて適切なお方がいらっしゃるまで、ブラッシュの町の平和を維持する事をお約束いたします」


 バルは俺に深々と礼をして誓いを立てた。


「ああ、頼んだぞバル総督代理」

「ははーっ!」


 バルが平伏する中、周りにいる生き残りの兵や予備役の男たちがはやしたてる。


「バルさん、総督代理だってよ!」

「めでたいじゃないかバルさん!」

「頼むよ代理!」


 笑いの中でルシルが俺にささやいた。


「バルってそれなりに人々からの信頼も厚かったのかもしれないね」

「そうかもな」

「だから上層部からは煙たがられて、百人隊長くらいで止められていたのかもしれないけどさ」


 確かに市民や一般兵から人気のある隊長はその上の者から見たら面白くないかもしれないが。


「それは束ねる者が狭量なだけだろう」

「そうだよね。自分に能力が無いからできた部下に嫉妬しちゃうのかも」

「ルシルは魔王だった頃そういう気持ちがあったりしたのか?」

「ううん、私は能力のある部下には全部任せちゃったから。だから楽だったけどね」

「まあそれも高い能力を持っているからこその余裕なのかもしれないがな」

「どうだろ~?」


 ルシルは子供のように笑って俺の鼻先をつついた。


「誰かさんはどうなんでしょうね?」

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