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商売繁盛にたかるウジ虫め

 試食の形が町の人たちに受けたようだ。今や裏路地は人の山で大変な事になっている。


「はいこちら、干し肉三つですね。お待たせしました、六ゴルドです、はい確かに! いらっしゃいませー、毎度ありー! カイン、試食よろしくー」

「はーい、ご試食の方こちらへどうぞ、お一人様お一つでお願いしまーす」


 ルシルがあれやこれや指示を飛ばし客をさばいていく。シルヴィアも会計を高速でこなしている。カインも試食の用意をしては配り回っていた。

 それでもひっきりなしに客がやってくる。俺の品出しも休み無しだ。


「ん、なんだ?」


 人だかりで騒がしいのは確かなのだが、奥の方の騒ぎは少し異質な。怒号が飛び交ったり、あまりよくない雰囲気だ。


「やいやいやい! どきやがれてめぇら! 邪魔すると蹴殺すぞっ!」


 物騒な物言いで怒鳴り散らす男。人の波が割れてその男の所まで道ができる。見ればチャラチャラした格好の男が三人いた。


「やいやい! おめぇらいったい誰に断って店なんかやってんだ、あぁ?」

「それは……」


 シルヴィアが対応しようとするがそれを俺が押しとどめる。


「ギルドに話をして正式に認可を取っている。モンデナイとかなんとかいう奴も店を開く事には文句を言っていなかったが、何か問題でもあるのかね」


 こういう輩の相手は護衛も務める俺の役目だ。


「あんだぁおめぇ!? ぁんのか、あぁん? んだってんならぃやっしゃんぞおるぁ!」


 男は俺の胸ぐらをつかんで顔を引き寄せる。


「ちょっと何言ってるか判らないんだけど。話なら向こうで聞こう、ここでは周りに迷惑がかかるといけない」


 どうやら男は理解したようだが、んあんあと意味の判らない事を口走っていて理解に苦しむ。残る二人は理解できたのか、移動する男についていった。俺もそれに従って裏路地を進む。

 男が行き着いたところは裏路地でも少し開けた場所。


「ここでいいのか? ただの空き地みたいだが」

「あんちゃんいい度胸してんじゃねえか、あぁん? 今ここでボコってやってもいいんだぜぃ?」

「そのつもりだったのだろう。おいおい、武器は穏やかではないな」


 男たちはナイフを取り出すとこれ見よがしに手の中で回したり振ったりする。どうやら威嚇のつもりらしい。

 俺は一つため息を漏らす。


「おうあんちゃん、俺ら相手にビビらねえとはたいしたもんだな。だがな、俺らの縄張りであんな騒ぎを起こされちゃこっちが困んだよな」

「正式な許可を得てのことだ。俺は一向に困らん」

「そういうことを言ってんじゃねぇんだよっ!」

「お前たちはギルドと関係はないのか? 他に正当な理由があるなら聴こうか」

「正当だぁ!? 俺らチームラングレンは町の治安を守ってんだよ、商売したいなら俺らに稼ぎを全部寄越すんだなぁ!」

「それでは商売ではない」


 男がナイフを繰り出す。先程から耳の奥が痛くなっていたから俺に敵意を向けている事は判っていた。

 俺はそのナイフの軌道から外れるように右へ一歩だけ足を動かす。過ぎ去るナイフ、そして男が無防備な背中を俺に見せる。それを手刀で叩くと男は地面にへばりつくようにして倒れた。


「それが本当なら手加減はしないぞ」


 残る二人ににらみを利かせる。俺が倒した男もようやく起き上がって口に入った土を吐き出す。


「ぺっぺっ、お、覚えておけよ、今日の所はこれで見逃してやる!」


 土と一緒に捨て台詞を吐いて男たちは別の路地に逃げて行った。

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