魔力無効のその向こう
ラスブータンは手にした魔血石を高々と掲げる。
「さあ天罰ですよ! てっきめーん!」
俺に向かって電撃が走るが、それを覚醒剣グラディエイトで受け止めた。
「何ですと!」
ラスブータンは驚きの声を上げる。
「俺の剣は魔力を帯びた剣だ。電撃なら溜めておく事も……できる!」
「なにぃ!」
俺は剣に溜まった電撃をそのままラスブータンの立っている建物へとぶつけた。
「そんな剣の一撃くらいで建物が……あ、えっ!?」
「一つ教えてやる。どうしてこの町の壁が破壊されたのかを」
「え、あ、まさか……!」
俺の放った渾身の一撃が建物の一階部分を木っ端微塵に吹き飛ばす。
壁に亀裂が走りそれが二階、三階と伝わり、ラスブータンの立つ屋上へと到達した。
「ひ、ひぎゃあ!」
足場の崩れたラスブータンは瓦礫と共に落下していく。
「魔力が効かないのなら物理で潰すまでだ」
俺は舞い上がる土煙の中、なんとか這い出してきたラスブータンを見つける。
「は、はひ、たしゅけれ……」
血と埃にまみれて瓦礫から出てきたラスブータンは俺の足下にすり寄ってきた。
「なんれもしましゅ、なんれも……」
ラスブータンは俺の足にしがみつき、顔をすりつける。
「ゼロ、こんな奴生かしていてもいい事ないよ」
「まあそう言うなよルシル、一応はこの国をまとめていた奴だ。権力を持った者にはそれなりの責任を負ってもらわなければな」
俺の言葉でラスブータンは恐れおののく。
「ひぃ、もう拙僧は歯向かいませぬ。あなた様の強さは十分理解しましたゆえ、この通り降伏いたします!」
悲痛な表情でそう言いながらラスブータンは懐に手を忍ばせる。
「ゼロ!」
ルシルの叫ぶ声と同じタイミングでラスブータンの持った物が俺の足に押しつけられた。
「さあこれで、地獄の業火に焼かれるがよいわ~!」
ラスブータンが俺に押しつけた所から激しい炎が噴き出す。
「魔血石を魔力変換して炎でも生み出したか」
「はーっはっはは、解説ご苦労! 余裕を持っていられるのも今の内ですぞ! さあどんどんとこの炎がお前に……燃え移って……あれ?」
俺の足についた炎は激しく大きく燃え上がるものの、俺は微動だにしない。
「や、やせ我慢もそれくらいにした方がよいですぞぉ!?」
「別にそういうものでもないのだが俺には温度変化無効のスキルがあってだな、熱の変動ではダメージを負わない能力があるんだよ」
「へ? じゃあ炎の魔法も……」
「着ているものは焼けるけどな。お陰で俺の履いているブーツは買い直さなくてはならなくなったがな」
俺は裸足になった足でラスブータンを蹴り上げる。
「ぷぎゃう!」
俺に蹴られたラスブータンが吹き飛ばされ、また瓦礫の中に埋まってしまった。