高所からの殲滅戦
「痛っ」
耳の奥に痛みが生じる。Nランクスキルの敵感知が機能したのだ。
「これは俺に殺意を向けてきたという事だな」
俺の放った光の球で辺りは明るくなっている。
俺は監視塔の小窓から手を出したままで攻撃系のスキルに切り替えた。
「Sランクスキル発動! 風炎陣の舞で俺に立ち向かってくる敵意をその心ごと焼き尽くせ!」
俺の両手から放たれた炎が渦を巻いて敵兵をなでまわす。
炎の渦に巻き込まれた敵兵が叫び声を上げて燃えていく。
「まだだっ!」
俺は次々とスキルを発動させ炎の渦をいくつも創り出す。生み出された炎は生き物のように兵士たちを飲み込んでいく。
暗闇の中俺の放つ炎と焼ける兵士たちの断末魔が広がっていった。
「ルシル、トリンプ」
俺は近くにいる二人に話しかける。
「そろそろ出るか。これでまだ生き残っているようならたいしたものだが」
「まだ眠いけど……」
「なら置いていくからあとから来るか?」
ルシルはふくれ面をしながらも立ち上がって服の埃を払う。
「そんな訳にはいかないでしょ。Rランクスキル氷塊の槍! 壁を突き破れ!」
ルシルは監視塔の壁に向かって氷塊の槍を解き放つ。
氷の塊が尖った槍になってレンガの壁に突き当たり、壁に大きな穴を開けた。
「先に行っているからね」
そう言うとルシルは壁の穴から飛び降りる。
着地の直前でRランクスキル海神の奔流を少しだけ放ち、落下の衝撃を少なくしていた。
「先を越されてしまったな。さっき扉の鍵は開けておいたからお前は普通に降りてきていいぞ」
俺はトリンプにそう言って壁の穴から飛び降りようとする。
ここは三階だから高さとしては十メートルくらいか。
「お、おい」
トリンプは俺の背後から腰に手を回してしがみついてきた。
甘い吐息と背中に押しつけられる柔らかな塊が俺に伝わってくる。
「トリンプも一緒に……」
「下で受け止めるのじゃ駄目か?」
「駄目、一緒」
俺は小さくため息をついてトリンプを背負う。
「仕方がないな、しっかり捕まっていろよ」
「うん」
「あんまり顔を近付けすぎて角を当てるなよな」
「ごめん」
俺はトリンプを背負ったまま壁の穴から飛び降りた。
「Sランクスキル剣撃波」
俺は剣を振ってその衝撃波を放つ事で落下の速度を落とす。これで着地をしてもダメージはない。
「おおっと!」
さっきルシルが放った海神の奔流の水が地面にまかれていてその上に降りてしまった。
背負っていたトリンプの分、重心が後ろに傾いていた所で着地したものだから足が滑ってしまう。
このまま後ろに倒れてしまってはトリンプの上に乗っかってしまいかねない。
「なんのっ!」
俺は身体をひねってトリンプの下になるよう倒れ込んだ。
「きゃん!」
俺は身体を半回転させたせいで背中から地面に叩き付けられた。
「わっぷ!」
俺の目の前が真っ暗になって何か柔らかい物で顔が塞がれた。
「くっ……!」
俺が必死にもがいてこの状況を打開しようとする。
「ふぁ……ひゃん!」
上からトリンプの変な声が聞こえた。
「ちょっとゼロ~」
「ふぁぶ……ふがふが!」
「何言ってんのよ。それよりトリンプ、あんたどきなさいよ!」
ルシルの棘のある声のあと、ようやく俺の顔に乗っかる圧力が弱くなる。
「あ……」
俺の上でトリンプが四つん這いのような格好になった。それで俺の顔から……。
「おっぱい……」
柔らかい物が俺の顔からのけられた。