表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

365/1000

捕虜の処遇

「あたら命を無駄に散らす事もあるまい」


 俺のスキルでかなりの数の兵士が斬り捨てられた。

 それ以上に逃げた者も多く結局降伏して残った者は少数だったが、それでも二十人程はいただろうか。


「ブラッシュ王は既に捕らえている。俺たちの国へ攻撃していた時にな」

「国王様が……。それじゃあ遠征軍も」


 降伏した兵士たちの中からもざわめきが伝わってくる。


「そうだ。まだ殺してはいないが国王を失った国だ、王と同じように降ってくれると嬉しいのだが」

「そういう事でしたら……」


 兵士たちは渋々ながらもどうにか理解はしてくれたようだ。


「ねえゼロ、どうして敵が降伏するとゼロが嬉しいの? 別に滅ぼしちゃえばいいじゃない」


 監視塔から様子を見に戻ってきたルシルが今の状況を見て意見する。


「ルシル、たとえ敵国だろうが俺たちに牙を剥いてきた奴らだろうが、それを望んでいない者は必ずいると俺は思っている。そういう俺たちの国に賛同する、共に栄えようと考えられる奴もまとめて滅ぼしてしまうのはもったいないと思ってな」

「そういう事だったらもっと国内からいい人材を育てたらいいでしょ、何も敵国の人間を使わなくても」

「それもそうなんだがな、国内と言っても人口の絶対数が足りないんだ。国を治めるにはそれなりの人数がいないとな」

「そんなものかなあ」

「そんなものだよ」

「二度と攻めてこないように、皆殺しにしちゃえばいいと思うんだけどなあ」


 ルシルの言葉はなかなかにして物騒だ。


「一国だけならそれでもいいかもしれないけどな。こう何国も従えていると人数が少なければ野獣に襲われたり災害に遭った時に対処ができなかったりするからな。どうしてもそれなりの数が欲しい」

「人間らしいわね」

「人間だからな」


 ルシルもそういった人間社会というものの形を理解しつつあるようだ。

 魔王だった頃の力でただ魔族が集まってくる、そして個人で全てを賄ってしまう社会とはまた違う所が考えの違いを生むのだろう。


「ねえそれよりもさ」

「なんだよ」

「その背中の、いつまでぶら下げているつもりなの?」

「あ」


 俺はずっと背中にしがみついたままになっているトリンプの腕をつかむ。


「自分で立ちなさい」

「は……い」


 トリンプは大人しく言う事を聞いて俺から離れた。

 その表情は納得のいかないような様子で、下唇を突き出して頬を膨らませている。


「そう変な顔をするなよ。こいつらは降伏したんだ、もう魔族だからってお前に手を出したりはしないだろうよ。おい、そうだろう?」


 俺はトリンプに理解させようとして、兵士たちに質問という形で確認をした。


「も、もちろんです。魔族というだけで剣を向けたりはしません!」


 兵士たちが口々に言うものだから、その勢いにトリンプが怯えて俺の後ろへ隠れてしまう。


「やれやれ、どうしたものかな……。とりあえず日も落ちて暗くなっている。監視塔に入って一夜を過ごすか。おいお前たち」

「はいっ!」

「お前たちは一応監視塔の詰め所を使え。俺たちは上層階に鍵をかけて休むが、襲いに来ても無駄だぞ。いいな?」

「は、はいっ! 襲うなんて滅相もない!」


 兵士たちは本心からなのかどうかは判らないが、敵感知センスエネミーは発動していないから今は敵意がない。

 ただ、それが真夜中になっても同じかどうか……。


「まあ、どうとでもなるんだがな」


 俺はルシルの頭をなでながら監視塔へと向かっていった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ