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監視塔から無駄な増援

 剣撃の音を聞いてか、監視塔から追加で兵士たちが現れる。

 周辺を警戒して歩いていた奴らも集まってきた。


「なんだこいつ、よくも俺らの仲間をやってくれたな!」

「五、六……っと全部で八人か。監視塔に結構いたもんだ」


 俺は集まってきた兵士たちを見回す。


「それでも程度としては同じくらい、だとすると戦うだけ無駄だぞ」

「なにおう!」

「命を捨てる覚悟があれば剣を抜け」


 俺が剣を大きく素振りすると、貼り付いていた血糊が弾き飛ばされた。


「折角綺麗になった剣をまた汚したくはないからな」

「なん、だと!」


 いちいち俺の言葉に反応する奴らだ。

 だが転がっている五人の死体を見ておいそれとは襲ってこない。


「なら先を行かせてもらうが、彼女は俺たちが連れて行くぞ」


 それだけ宣言して俺は追われていた魔族の女性を引き連れ、兵士たちの間を通り抜けようとする。


「ゼロ、大丈夫?」

「平気だろう。どうせビビって攻撃なんかしてこな……」


 俺は飛んできた矢を人差し指と中指で挟み込んで受け止めた。


「攻撃してきたね」

「そうだな」


 後ろに回り込んでいた兵士が俺に向かって剣を振り下ろす。

 俺は指で挟んでいた矢を襲ってきた兵士に向かって的当ての要領で投げ放つと、その矢は兵士の眉間に突き刺さった。


「おのれぇ!」


 その様子を見た残りの兵士たちは一瞬戸惑いを見せるも、他の奴らの手前逃げ出す訳にも行かないのだろう。

 泣きそうな顔をしながらも俺に一太刀浴びせようと襲いかかってきた。


「それだったら逃げればいいのに」


 ルシルの言う通りだ。


「死にたくなければ逃げろよ。追ったりはしないから好きにしろ」

「ふざけんなぁ!」


 俺は襲いかかってきた兵士の一人を一刀両断にする。

 返す刀でもう一人を横薙ぎに真っ二つにした。


「いい加減に理解しろよ。お前たちでは俺に勝てんぞ!」


 俺はまだ攻撃しようとしてくる連中に声をかける。

 それでも兵士たちは俺に向かって剣を振り回す。


「耳の奥がいたいからな、敵感知センスエネミーの効果が出ているという事はそれでもお前たちは俺を殺す気でいるのか」


 俺は一つ大きく息を吸う。


「残念だがこれ以上は面倒だ」


 俺に向けられた剣を躱し、避け、打ち払った。

 剣を弾かれた兵士の一人がのけぞってよろける。


「SSランクスキル発動、旋回横連斬サイドターンスラッシュ! 俺の周りにいる敵意を討ち滅ぼせ!」


 俺は自分を軸とした回転で剣を振るう。

 横に斬り刻まれた兵士たちがバラバラの肉片となって飛び散った。


「な、なんという強さ……なの」


 三本の角を生やした魔族の女性が俺の戦いぶりに息を呑む。


「当然でしょ、ゼロは勇者なんだから」

「勇者……」


 ルシルが自分の事のように自慢し、女性はその様子に唖然としていた。


「なあルシル」


 俺は剣を拭いて鞘に納めると、監視塔の事をルシルに伝える。


狼煙のろし……?」


 ルシルは見たままを口にした。

 監視塔のてっぺんから白い煙が立ち上っている。


「ああ、応援に来る時には上げていたんだろうな」


 暗くなりかけた草原の中、狼煙が白い蛇のように監視塔から立ち上っていた。

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