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波間に浮かぶ

 俺たちの連携攻撃で敵船が次々と沈んでいく。

 だが敵の攻撃で俺たちの船にも被害が出ている。敵の火の玉が巨大船に命中して、三隻のうち一隻が大破したのだ。


「巨大船は沈むのに時間はかかるが、もたもたしていたら逃げられんぞ。早く脱出しろ!」


 消火は済んだものの船の横腹に開いた穴から浸水が激しい。


「なんとか凍結の氷壁(アイスウォール)で急場を凌ぐぞ!」


 俺はスキルを使い船腹に空いた穴をふさぎつつ船が沈むまでの時間を稼ぐ。

 その間に少しでも船員が他の船に救出されるようにするのだ。


「ゼロ、まだ敵が攻撃してくるよ!」

「なんだと!」


 敵船は五隻とも致命傷を与えている。その内三隻は既に沈んでいて多量の泡と兵士を海に放り出していた。


「残りの二隻か。沈み始めていてもう助からないというのに! 逃げず船と運命を共にするというか!」


 確かに二隻の敵船は間もなく沈むだろう。

 だがそこに乗っていた兵たちはスキルを放ってこちらを攻撃してくる。


「命尽きるまで攻撃する事を止めないとは、その心意気見事だ!」


 俺は敵の二隻の間に高速船を進めた。


「ゼロ! 敵の攻撃が!」

「ゼロ様、我が艦の一隻に攻撃が集中しております!」

「ルシル、速度を更に上げてくれ! ベルゼル、敵の火の玉を岩の棘で狙え! 打ち落とせればよし、勢いを殺げればそれでも構わん!」

「判った!」

「承知!」


 俺の指示で船が速度を増して敵船に突撃していく。

 敵が放つ火の玉はベルゼルの放出する棘でかなりの数が打ち払われている。


「くっ、それでも被害が広がっていく……」


 俺は力を溜めつつ船首に立つ。


「お前たちの矜恃きょうじは認めよう。だが、だからといって俺たちが滅ぶ訳にはいかん! 俺の最大の技をもってその覚悟に応えよう!」


 俺が力を込めて剣を構える。


「冥界への土産話とするがいい。SSSランクスキル発動っ、重爆斬ヘビースラッシュ!」


 力の限り剣を振るう。

 能力を最大限放出して一閃した剣圧は、海を斬り割き波を弾き飛ばし、敵船を二隻とも両断した。


「凄い……海が剣撃で平らになった(・・・・・・)……」


 一瞬の静寂にルシルの驚きの声だけが響く。

 そしてその直後、船が砕け波が暴れ人々が放つ阿鼻叫喚が世界を覆った。


「味方の救援に迎え! どうにかして残った船を保ち港へと向かうのだ!」

「ゼロ……敵がまだいるよ」


 ほんの少し波間でもがいている敵兵はいたが、船の沈む波と泡で身動きが取れなくなり自分たちの船と共に沈んでいく。

 どうにか木の板にしがみつきながら波間に浮かんでいる者もいるが、それも力尽きて一人また一人と沈んでいった。


「もう奴らには反撃する力が無い。放っておけ。勝手に沈む」

「そうだね。早めに諦めれば楽に行けたのに」

「それも奴らが選んだ道だ。その想いは遂げさせてやろう」


 俺たちの乗る高速船は転身して味方の救護へ向かう。


「少し魔力の無駄遣いな気もしますが……」


 ベルゼルが一人後ろを向いて沈んでいく敵兵たちを見る。


「Rランクスキル暗黒の棘(ダークネス・ソーン)発動します。さあその生にしがみつく愚か者どもを奈落の底へとたたき落としてしまいなさい」


 ベルゼルの放つ無数の棘がかろうじて生き残っていた敵兵たちに突き刺さる。

 棘の嵐が過ぎ去った後は、船の残骸しか浮かんでいなかった。

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