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宮殿での抵抗

 宮殿には急場しのぎの柵がいくつか立てられていた。その柵を挟んで小競り合いが行われている。


「宮殿に立て籠もっているのは市民兵たちか。包囲しているのは奴隷の兵士たちだな」

「どうするゼロ、まだ抵抗するみたいだけど」

「引くに引けなくなったのかもしれないな。よし」


 俺はルシルたちに今の場所で待機してもらうよう話し、一人で宮殿へと進む。


「戦闘を止めろ! 俺はお前たちのどちらとも指示命令系統にないからな、俺の命令を聞く義務はないのだが、それでも戦闘を止めろ!」


 俺は声を上げながらゆっくりと宮殿へ近付いていく。


「お、あんた壁の外で会った人か!」


 奴隷の兵士の中から一人の男が出てきた。


「なんだあの時のチンピラか」

「チンピラ言うなよ! でもなんであんたが俺らの戦いに入ってくるんだよ。それにあの骸骨兵士、あいつらいったい何なんだ!?」

「細かい話は後だ。とにかく今は無駄な血を少しでも流さないようにしたいのだ」

「無駄な血……」


 奴隷区にいたチンピラは俺の言葉に思うところがあったのだろう。


「だがなあ、王宮を占領しないと俺らの戦いは終わらねえんだよ。結局壁の中の奴らがのさばっていちゃあ奴隷解放も何もないんでな」

「お前らの言いたい事も判らんでもない。だが、だとしたらどうするんだ。奴らに取って代わってお前らがこの国を牛耳るって言うのか?」

「え、えっと……」


 俺はチンピラの考える顔を見て少し大きなため息を吐いてしまった。


「な、なんだよ、いろいろあるんだよ!」

「まあそうだろうな。考えがまとまらないという事もあるだろう。だが、反乱をしたとしてもその後の考えがなければ権力を握ったとしてもろくな事にならないぞ。権力者の批判ばかりで代案を出さず、自分たちがいざその地位に就いた時に具体的にどうするかという事を事前に考えていないとな」

「む、難しい事を言うなよ、俺らはただ今の生活が嫌で、のうのうと贅沢をしている奴らを許せないだけだ!」

「なるほどそれは末端の兵士であれば十分かもしれないがな。先導する奴はいるのか?」

「先導……? いや」

「この反乱もなんとなくか!?」


 チンピラは俺に図星を突かれてぐうの音も出ない。


「現状に不満を持つ事自体は別段問題ではない。だが数が集まる、集団が力を持つ、とした時にそれをどのような形でもいいからまとめる者がいなければ……」


 俺がこの事態をどう収拾しようかと考えていた時だった。

 チンピラどもが活気づいて騒ぎ始める。

 俺の所にいたチンピラが近くにいた連中を呼び止めた。


「なんだ、どうした!?」

「状況が動いた! こっちに来い!」


 チンピラは他の奴隷の兵士たちと共に、また戦乱の中へと突入する。


「ゼロ、どうやら……」

「そのようだな」

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