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深夜の奴隷区

 俺は暗くなると同時に手に持ったランタンに火をともす。


「勇者ゼロ、クラーケン号から応答があったぞ」


 セシリアが俺と沖合の船との動きに反応した。


「上陸、了解、か。ここまでは順調だな。セシリア後は頼めるか」

「承知した。勇者ゼロは予定通り?」

「ああ、シルヴィアたちを追う。沿岸警備隊の詰め所に行けば成功したかどうか判ると思うが」

「あの商人の娘だし、元とは言え魔王だった娘とその右腕がいるのだ、間違いはなかろう」


 俺は上陸部隊の動きをセシリアに任せ、沿岸警備隊の詰め所へと向かう。

 事前にルシル経由でアガテーの調べた内容を聴いていたからおおよその場所は把握している。


「そしてその途中にあるのが奴隷区か」


 港から壁の門に向かう道は整備されていてその周辺もある程度綺麗な区画になっていた。

 だが俺たちが通された海岸から門へ直行しようとするとその間にある奴隷区を通ることになる。

 シルヴィアたちは海岸線を通って港まで一度迂回して戻ることでこの区画を通らずに済んだのだろう。


「おいそこの」


 案の定、ごみごみとした通りを歩いていると柄の悪そうな男に呼び止められた。

 俺は面倒事は御免と無視をして通り過ぎようとする。


「おい聞こえてんだろ、お前だよお前!」


 歩く俺の足を引っかけようと男が足を出してきた。

 俺はそれを知った上で男の足に引っかからず、逆にその足を踏みつける。


「ぎゃぁっ! 痛ぇ! てめぇ何しやがる!」


 それでも俺は無視をして歩きさろうとすると、男が俺の肩をつかんできた。


「おいよさないか。俺は余計なもめ事を起こしたくはないんだ」

「何をぬかす! 俺様の足を踏んでおいてよくもそんな事が言えたもんだな!」


 よくあるチンピラの絡み文句だ。


「おい、みんな出てこいや!」


 チンピラが一声かけると物陰から四人の男が出てきた。


「まるでもめ事になるのが判っていたかのような手際の良さだな」

「うるせぇ、生意気言ってっと命はねぇぞ!」


 チンピラが威勢のいい事を言うと周りの奴らも下品に笑いながら近寄ってくる。


「はぁ……どうして底辺の奴らはこう馬鹿ばっかりなんだろうな。いや、馬鹿だから底辺なのか? ふむ、そこは興味深いな」

「なぁにをごちゃごちゃぬかしてやがる!」


 チンピラの一人が拳を振り上げて俺に襲いかかってきた。

 俺はその拳を手の平で軽くいなして躱すと、襲いかかってきたチンピラは身体のバランスを崩して顔面から地面に突っ込んでしまう。


「やりやがったな!」

「一斉にかかれ!」


 俺は別に何もしていないのだが、こうなっては仕方がない。

 向かってくるチンピラを一人、また一人と転ばしていく。


「ち、ちくしょう!」


 残る二人のチンピラが腰の剣をぬくと、倒れていた奴らも起き上がって武器を構えた。


「おいおい俺は丸腰だぞ」

「そんなん構うかい! 俺らをコケにしたツケを食らいな!」


 五人のチンピラが円を描くように俺を包囲する。


「そんな物騒な物を持ちだして、怪我をしたら痛いだろうに」

「死んだら痛いとも思わねぇだろうがよ!」

「ああまったくその通りだ。だから止めろと言っている」


 俺はあきれ顔でチンピラどもを見回した。


「お前ら五人のうち一人でも死んだら剣を納めるか?」

「何だと、素手で俺たちと、それも五対一で勝てると思ってんのか!?」

「そうだな……」


 俺は超加速走駆ランブーストを発動させて目の前にいるチンピラの腹に一撃を食らわせる。

 そのチンピラは胃の内容物を吐き出してうずくまってしまう。

 この一連の動きが一瞬で行われたことに残る四人のチンピラはたじろぐ。


「やれやれ、奴隷軍にも徴兵されず一般兵にも志願しない奴らが奴隷区に残っていると思えばこのていたらくか」


 俺の独り言にチンピラどもは冷や汗をかきながら聴いているのだろう。焦りとおののきが伝わってくるようだ。


「カミスキーもこれでは浮かばれないなあ」

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