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荷馬車の通る道

 街道から案内板に従って小道に入る。野営地からこの案内板まで二日かかったが相変わらず使われていない街道の通行には苦労した。


「道の端に荷馬車の車輪が落ちちゃった時はどうしようかと思ったよ」

「ルシルちゃんごめんね、ボク役に立てなくて」

「いいんだよカインは力より頭を使ってくれれば」


 確かに車輪がはまった時は俺が簡単に持ち上げたものだから、中で座っていたカインが転がり落ちてしまったほどだ。

 今回シルヴィアに同行しているのは、弟のカインと護衛役として俺とルシル。ドッシュたちヒルジャイアントは野営地でお留守番だ。


「ゼロさん、ドッシュさんたちは大丈夫でしょうか」

「心配しても仕方がないさ。人間なんてほとんど来ないだろうし野生動物なら退治できるだろう。気になるところと言えば食事面だけど、それも大丈夫だろう。なんせほら、この干し肉」


 俺は腰の荷物入れから干し肉を取り出してしゃぶりつく。


「これ、最後はあいつらだけで作ったんだよ。獲物を狩る所から干して保存できるようにするまで全て」

「そうでしたね。新しい布を買って、仕立屋さんほどではありませんが服を作ってあげたいです」

「それはきっと大喜びだろうな。あいつらの嬉しそうな顔が目に浮かぶよ」

「私も新しい服欲しいな~」

「そうね女の子だもの、お洒落したいわよね。品物がたくさん売れたらそのお金で服を買いましょうか」

「うん!」

「ここにも大喜びの奴がいたな」


 俺たちの希望に満ちた笑い声が荷馬車の音と一緒に弾んでいた。


「シルヴィアはガレイに行ったことがあるのか?」


 何とはなしに聞いてみた。


「いえ、私も初めてなのです。私はどちらかと言うと陸路を多く使っていましたので、水上交易の盛んなガレイにはあまり縁がありませんでしたの」

「そうか」

「でもご安心くださいね。どこの町でも商売をするためには大体同じような決まりがありますので、そこから大きく外れない限りは大丈夫ですわ」


 頼もしい台詞に俺だけではなく他の面々も緊張が少し解けた気がした。

 そんな楽しいひとときを邪魔する奴らが道を塞いでいる。


「はいはいそこの、ちょっと停まってね~」


 馬鹿そうに間延びした話し方。人を馬鹿にしているとしか思えない。


「停めるいわれは無いのだが、俺が話を聴こうか」


 見た感じ、いかにもな奴らだ。

 薄汚れた防具に所々錆の付いた剣。足下はサンダルか裸足。

 かゆいのか常に頭を掻いている奴もいる。

 そんな連中が六人、荷馬車の前に立ちはだかって俺たちの通り道を塞いでいた。


「追い剥ぎか。どこかで遭遇するとは思っていたが、ガレイを前にしてついにやってくるとは……」

「おいおいそこの兄ちゃん、偉そうな口を利くならまずお前さんからお仕置きしてやってもいいんだぜ? 腕一本とか高い通行料を払う前に、お金で解決できることはお金で何とかしようと思わないのかぁ?」


 追い剥ぎの一人が下品に笑うと他の連中にも伝播する。


「そうだなあ、金で解決できるならそうするのもいいかもしれないが、生憎と今は売り物があっても金が無くてな。腕一本渡す訳にはいかないから……なぁっ!」


 俺は身近な奴の口に拳をたたき込む。


「拳の一撃ならくれてやってもいいぞ」


 咥えさせた拳を力一杯振り抜く。拳を叩き込まれた男は道の脇の木まで飛んで激しくぶつかる。

 そのまま意識を失ってへたり込む男の頭に、今の衝撃で折れてしまった木が直撃した。

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