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海上の戦後処理

 俺たちは小舟から巨大船に乗り移り、降伏した連中の武装解除を見守る。

 俺は敵兵の降伏を認めた。これ以上犠牲を出したくないとかなんとか、表向きには色々と言えるかもしれないが、実際には反撃する事もできない状態での敵軍は放置してもいいと判断したからだ。

 殲滅戦となれば相手をしらみつぶしに倒していかなくてはならない。俺一人ではそれが難しいし被害のあった土地の復興作業がある中で人手を割きたくないという気持ちもある。


「だからまあ、降伏を認める事で敵勢力が一カ所に集まり、それをまとめて対処できるなら手間が無くて楽だという側面もあるな」

「それじゃあ集めた敵は一撃で殺しちゃうの?」

「生殺与奪は勝者の権利ではあるが、降伏した相手をいちいち殺してしまうよりは奴隷とまでは言わないが復興の手助けのために働いてもらう事もできるだろうからな」

「ゼロがそう言うならそれでもいいよ。私は人間の生き死にとかそんなに興味ないし」

「魔族ももっと仲良くしてくれてもいいんだけどな」

「仲が悪いとか言う訳でもないんだけど……そうね、努力してみる」


 ルシルはそう言っているが、生来の生き方というものもあるし早々変えられないのも判るが、人間と魔族、そして他の種族も同じ国で暮らしていく仲間だ。

 もちろん人間同士でも敵対する事はこの戦でも証明済みな訳だが。


「まずは敵の兵とは言え助ける事ができるのであれば手を貸そう。どうせこの巨大船が無ければ航海もできないから逃げるに逃げられないだろうからな」


 あの首を刎ねられた帝国貴族の事もあって、強硬的に降伏を拒否していた奴は身柄を拘束されていた。

 他の者も戦意を喪失させて武器は手にしていない。


「小舟でも空き樽でも何でもいい、浮くものがあればそれを投げ入れておけ。脱出艇でもあるならそれも使ってまだ息があって浮いている奴を拾い上げてくるんだな」


 俺は敗戦の衝撃で何も手に付かない状態の兵たちに自分たちの仲間を救助するためのきっかけを作ってやる。

 俺に反抗しない限りはある程度の自由を認めてやるつもりだ。


「判りました。手の空いている者は怪我人の手当と生存者の救助だ! 海に落ちた者たちを一人でも多く救うのだ!」


 やる事が明確になったからだろうか、兵たちの動きが機敏になる。

 ある程度統率の取れた動きは奴隷の兵士たちとはまた違った訓練の成果なのだろう。


「あとは岸まで連れて行ければ、だな。どうせこの船は大きすぎて入り江にも浜にも行けないだろう。陸への移動は小舟で行うしかないからな。ルシル、岸にいるシルヴィアに思念伝達テレパスで連絡してくれ。戦闘は終わった、降伏した敵兵を送るのに船を用意してくれ、と」

「うん、それならさっき戦況を伝える時に手配しておいた」

「そうか、助かるよルシル」


 俺はルシルの頭をなでてやると、うっとりとした表情で喜んでいた。

 潮で髪がゴワゴワするからな、後でしっかり洗ってやろう。


「勇者ゼロ!」


 セシリアの緊迫した声で我に返った。


「まさか再戦かっ!」


 俺はセシリアの指さす方を見て武者震いする。

 厄介な相手が目の前に現れていた。

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