表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

321/1000

魔の海域

 俺たちは海上で小休止を取り次の攻撃の準備を行う。

 日はかなり高くなっていてジリジリと日差しが俺たちを照りつける。


凍結の氷壁(アイスウォール)のお陰で少し涼しいが、海面からの照り返しもきつくなりそうだな」

「ねぇ聞いたんだけど、凄く晴れている日に急な雨雲が来る事を海神の怒りって言うらしいよ」


 ルシルが支度をしながら話しかけてきてそれにセシリアも乗っかってきた。


「ルシルちゃん、それ俺も聞いたよ。海神の遣いの竜が行き交う船を襲うんだとか言うやつだろ?」

「副ギルド長さんも知っていたんだ?」

「その副ギルド長ってのはやめて欲しいなあ。今では城塞都市ガレイの商人ギルドだけじゃあなくってレイヌール勇王国の警備隊長でもあるのだから」

「判ったわ、モンデール伯爵家のご令嬢なのに男勝りで自分の事を俺って言う副ギルド長さん」

「ぬむむ……」


 セシリアは俺の腕を取って自分の胸に当てる。


「なあ婿殿、俺はこのままで構わないよな? ずっと町を守るために男の格好をして過ごしていたんだ。今更深窓の令嬢になってドレスをヒラヒラさせるような振る舞いは似合わないだろう?」


 そうは言いながらもかなり女性的な身体を俺に押しつけてきた。


「ま、まあセシリアはセシリアだからな、自分のやりたいようにすればいいと思うぞ、うん」


 俺はどうにか言葉を絞り出す。顔が熱くなっている気がするから、きっと赤くなっているのだろうと思うが。


「ちょっとゼロ! 今は戦闘中でしょ、こんな筋肉女とイチャイチャしてないで次の戦いの準備を……」


 そこまで言ってルシルは言葉を飲み込む。

 今まで眩しすぎるくらいの日差しがいきなり暗くなったからだ。


「この雲……かなり厚いぞ」


 いつの間にか黒い雨雲がこの海域を覆っていた。


「馬鹿なっ、雲が流れてくる気配など無かったのに!」


 セシリアが俺から離れつつ上空を見上げて身構える。


「スキルか魔術か、何の影響かは判らないが実際に雨雲が発生しているんだ。臨戦態勢を整えよう」

「うん!」

「判った!」


 それまで穏やかだった波も激しくなっていき、俺たちの乗る小舟も大きく揺れていた。


「ゼロ見て!」


 ルシルの指し示す先は敵の船団。俺たちが沈めた四隻の残骸は波間に消えていたが、残っている船もまだあるのだが。


「何だあれは……」


 セシリアが息を呑む。

 それも不思議ではない。敵の巨大な船に何かが絡みついている。船を締め付けるくらいの巨大で太い動く柱のような長い物体が。


「あれは……海竜? だが何本も出てきたぞ……」


 敵船団から離れた位置にいる俺たちにも、敵兵の叫び声が聞こえる。


「勇者ゼロ、あれって……」

「あれは海竜ではないな。俺も見るのは初めてだが、きっとイカとかいう奴だろう」

「イカ!? あんなに大きな、だって船に巻き付いて……ほら!」


 セシリアが言うようにイカだとしても大きすぎる。だがそのうごめく触手は白くヌメヌメと光り自由自在に動き巻き付く。

 その触手に絡め取られた巨大船が握りつぶされるようにして船の中心からへし折れる。


「なんて力だ……」


 俺たちはただ敵船団が破壊される姿を見ているだけだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ