新築物件分譲中
木材、と言ってもただ木を伐ってきただけの原木ならある。
「これを家とか家具とかにできるってすごいな……」
俺には作れる気がしない。工作スキルは持っていないからな。
「とりあえず木を二本立てる。少し離れたところにまた木を二本立てる。木と木の隙間に横にした丸太を重ねる。どうだ、壁っぽくならないか?」
「それより何本も立ててそれを縄で縛るっていうのもいいでしょー」
俺とルシルが有り物で家を建てようとしている。俺は自分で木を立てたり縄で結んだりするが、ルシルはドッシュたちを使って組み立てさせていた。
体力的に仕方がないが何か釈然としない。
「ふわぁ、疲れた……。これはやっぱり建築家とかの経験者がいたらなあ」
「でもそれなりにできているじゃない。壁というより柵ね、柵」
「それは人の事言え……」
ルシルたちは荒いながらも家の形ができていた。木を連続して立てて縄でくくる。三メートル以上の身長がある巨人たちだけあって柱の高さは申し分ない。
立てた柱の上には、これも壁と同じように何本もの丸太が縄でくくられて屋根になっている。
「この丸太屋根の上に水はけのいい布を被せて、その上に草と葉っぱを敷き詰めるの。飛ばないように石で押さえれば、ほら」
「おお、すごいな。思ったよりしっかりしているじゃないか」
ルシルたちは得意気になって自分たちの建てた家を眺めていた。
「それでルシル、中にはどうやって入るんだ?」
「あれ?」
柱で囲われた家は、中に入る手段がなかった。
俺は柵の作り方はなんとなく判ったので、野営地の外側にいくつか作っておいた。これで少しは防壁として役立つかもしれない。城塞都市とは言いすぎだが無いよりはいいだろう。
城塞都市といえば思い出す。
俺が焚き火の広場に戻ると、シルヴィアが荷馬車の整備をしていた。
「シルヴィア、精が出るな」
「はい、商材を確認しようと思いまして。色々と揃えたいものもありますし」
「城塞都市ガレイに行くのか?」
「そうですね、一番近そうな都市といえばガレイでしょうか。ムサボール王国に戻る訳にもいきませんものね」
「それはそうだ。となると俺も一度は行ってみたいと思っていたんだ」
シルヴィアは俺の言葉を受けて少し考える。
「それでは三日後に出発しましょうか。ガレイはアボラ川に隣接した都市で水上交易が盛んです。街道からは遠いので荷馬車で行くには不便ですが、道が無いわけではないので」
「そうか。では支度を始めよう。商品になるような物はあるかな」
「川辺の町なので質の良い木材は常に不足気味ですね。それと食肉。魚介類は多いですが獣肉は需要があるでしょう」
「なるほどな。移動に日数がかかることを考えれば、干し肉や燻製なんかが良さそうだな。それと毛皮か……」
食料ならば日持ちのするもの、そしてかさばらないものがいい。
「木材も今は運ぶ手段がありませんものね」
「川を下るか荷車を別に用意するか。流石に担いで行くのは量を運べないからなあ。ドッシュたちに運んでもらっても、二人で一本かなあ」
「荷馬車に入るくらいの長さにして持っていきましょうか。あちらの商人さんが品定めするくらいはできると思いますよ」
「そうか、それなら試しに持って行ってみようか。よし、そうと決まれば狩りの時間だ。おーい、お前たち、これから狩りに行くぞー!」
俺はルシルたちに声をかけて森へ向かった。