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首脳会議

 各地の部隊を率いていた者たちが沿海州に集結してきた。


「いくら開かれた会にしようと言っても村の広場で焚き火を囲んでと言うのは、開かれすぎな気もするが……どうなんだ勇者ゼロ」


 北の沿海州で防備をしていたセシリアが愚痴る。


「そうは言っても全員が入るような建物もないしな、いいんじゃないか、敵がいたとしても隠し立てするような内容ではない。これが俺たちの不利な状況にあったら秘匿する必要も出てくるのだろうが」

「そんなもんかねえ。肝が据わっていると言うか大胆と言うか。流石は勇者ゼロと言ったところか」

「褒めてもらえて嬉しいよ」

「どういたしまして」


 村の中心にある広場の焚き火を囲んで一堂に会する。


「ねえゼロ」


 ルシルは俺の左隣に座っていて、俺の方を横目でにらんできた。


「なんでカインがゼロの膝の上に座っているのよ」

「え、ああ、まあ、なんだ」


 座っていると言うより、猫耳娘の姿でカインが俺の膝の上で丸くなって寝転んでいる。

 俺は何気なしにカインの背中や頭をなでていた。


「ここが落ち着くんだにゃ~」


 カインのつぶやきが周りにいた連中の苦笑いを誘う。


「まあ、いいけど」


 ため息と共に吐き出したルシルの言葉が、少し俺の心をチクリとさせた。


「えー、おほん。それではこの俺、セシリア・モンデールが戦況を報告しよう」


 セシリアが立ち上がって説明を始めると、場の空気が真剣なものに変わる。


 西の大陸の辺境三王国との戦いは俺たちの勝利で終わった。

 それぞれの戦況を確認すると、中央の俺が敵兵を全滅させた事以外は、北も南も大打撃を与えたが全滅までには至らなかったという。


「一応は俺たちの優勢で一区切り着いたという所だが、まだ予断を許さない訳か」


 俺の感想にシルヴィアも立ち上がって状況を説明してくれた。


「そうですね、南のマルガリータ王国では、敵の王を捕らえて軍は撃退したものの敵兵力はまだそれなりに残っているという報告があります。王を奪還しようと攻めてくる事も考えられます」

「ベルゼルたちをこちらへ呼び寄せたのは早計だったかな」

「マルガリータと魔族の連合軍は王城に残っていますので、大事には至らないかと思いますが。そしてそれはこの沿海州も同じですね。多くの敵船を沈めはしましたがそれでも沖合にはまだ残存艦隊がいます。それに本国からの援軍があれば、こちらも捕らえた敵の王を取り返しに攻めてくる可能性がありますね」


 上手く頭を潰せば敵は逃げ帰るものかと思っていたが、生かして捕らえた事が却って徒になったというのか。


「だが王たちを捕らえたという事は素晴らしい。外交カードにもできるし奪還といっても正面から大部隊で攻めてくる事はないだろう。あからさまな敵対行動を示したら助けようとする王の首を刎ね飛ばす事にもなりかねんからな」

「勇者ゼロにそう言ってもらえると俺たちの判断が間違っていなかったと思えるよ」


 皆は多少の犠牲を払いつつも最善の対応をしてくれていた。

 敵の侵略に任せていたらどれだけの被害が俺たちを襲ったか、それを思うと後手には回ったかもしれないがその中でも最高の結果をもたらしてくれたと言っていいだろう。


「そういたしますと捕虜の処遇ですね」


 少し離れた後背から笑みを含んだ声が聞こえた。


「ベルゼル、着いたか」

「はい我が主ゼロ様、ベルゼル・バルこれに着陣いたしました」


 ベルゼルの横にはマルガリータの王、ノワール・ララバイ・マルグリットが立っていて、率いる荷馬車には捕らえた敵の王やその重臣が詰め込まれていた。


「これはまた大層な荷物でしたからなあ、扱いには手間がかかりましたよ」


 ベルゼルは人間の捕虜についてどのように扱ったらよいのかをララバイに聞きながら来たという。


「ワタクシでしたら捕虜など取らずに首級しるしだけあげてしまう所でしたが」


 魔族だからだろうか、不敵な笑みが不気味にこぼれた。

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