海の見える村で再集結
ウィブが海岸沿いにある漁村の上を旋回する。
「ここがスターベイの村か?」
風を切り裂くワイバーンの背に乗って俺はルシルに確認した。
「そうね、ここでいいみたい。下でカインが手を振っているでしょう」
「おお、あれか」
下を見ると集落の端、道の辺りにいる人影が動いている。
どうやら俺たちに向かって手を振って合図しているようだ。
「ウィブ、ゆっくり降りていってくれ」
「そこの空き地に降りるかのう」
「ああ頼む」
旋回しながらウィブが降下を始める。
徐々に地上にいる人影が誰だか判ってきた。
「シルヴィアとカイン、それと沿海州の男たちが数人か。流石にベルゼルやララバイたちは着いていないようだな」
「そうね、マルガリータ王国からはかなりの距離があるから」
マルガリータの王となったララバイたちは籠城戦の後に軍を再編し、防備を固めた上で主要な人員だけでこちらに向かっているはずだ。
「会議を進めている内に到着するといいがな」
「思念伝達でベルゼルと話をした限りじゃ、それ程時間はかからないみたいだって」
ルシルが確認をしてくれているお陰で状況は判りやすくなっている。
「情報が伝達できるという事はとてもありがたい。助かっているよルシル」
俺はルシルの頭を優しくなでた。
目を閉じて嬉しそうにしているルシルの顔を見ていると、こんなのんびりとした日常が訪れないかと願うばかりだ。
「着地するでのう」
ウィブが念のため俺たちに注意を促す。
俺とルシルはウィブの背びれにしがみつく。
ウィブの背中の後ろには捕らえたカミスキーが縛られているが、着地した衝撃で一瞬跳ね上がっていた。
「到着だのう」
ウィブが羽を畳み、四つん這いになって伏せの形を取る。
俺とルシルはウィブの背中から飛び降り、沿海州の男たちにカミスキーを降ろさせた。
「ゼロ様~!」
カインが猫耳娘の姿で俺に飛びついてモフモフの耳を俺の顔にこすりつけてくる。
「よしよし、きちんと撃退できたみたいだな」
「うん! ちゃんと言われたとおり、敵の船を追い払ったにゃ!」
俺はカインの頭も優しくなでてやった。
「ごろごろ……」
「まあカインったら。ゼロさん、お久しぶりですね」
「シルヴィアか。よく流通と兵站を守ってくれた。それにこの沿海州……」
俺は沿海州の荒くれ者たちの顔を見る。
どれもたくましく、それでいて愛嬌のある表情をしていた。
「沿海州の民を説得してくれた事も、礼を言わせてくれ。シルヴィアやカインの働きがなければ今の勝利はなかったはずだ」
「そんな恐れ多いですよ陛下」
「陛下はよしてくれ、なんだかくすぐったい」
「それも慣れていってもらわないと。ね、カイン?」
シルヴィアは俺に抱きついているカインを見て優しく微笑む。
「ゼロ様はこのままでいいにゃ~。にゃ、このままがいいにゃ~」
カインは喉を鳴らしながら俺から離れない。
「まったく、ゼロったらこういう所がまだまだ国王っぽくないのよね」
ルシルが呆れたような声で俺を非難するが、その顔は心なしか笑っているようにも見えた。