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溶岩の荒野

 ルシルのお陰で他の戦場についても状況が把握できた。

 俺がいる荒野、と言ってももはや荒野ではなく溶岩の吹き荒れる死の土地なのだが、ここでは敵兵五万を討ち滅ぼしコーム王国の王であるカミスキーを捕虜とする。

 北の沿海州も南のマルガリータ王国も、攻め寄せた辺境三王国の国王を捕らえつつ敵軍を撃退したという。


「これで奴らの侵攻も潰えたと言えるな」


 荒野には俺とルシル、戻ってきたウィブと捕らえたカミスキーがいる。


「そうだね、そうであって欲しいけど」

「王を取り返しに来るとでも言うのか? それはないだろう、これだけの損害を被ったんだ。軍を建て直すだけでも何年かかるか」


 撃退した軍だけでも十万近くにはなるだろう。生き残りがそれなりにいたとしてもそれを再編したところで壊滅前の戦力には戻らない。

 更に援軍を加えたとしても同じ程度の戦力を整える事ができるだろうか。


「撃退した奴らが先遣隊で、こちらの戦力を測るために少数を送り込んだとすればまた話は変わってくるが……十万で少数という扱いになれば、だがな」

「そうだよね」


 ルシルも納得してくれたようだ。心なしか緊張がほぐれたようにも見える。


「そうするとこれからどうしようか?」

「後始末は誰かに任せるとして、まずは皆を沿海州に集めよう。一番大きな港を持つ村はどこかな」

「カインから教えてもらったところだと、スターベイの村が一番大きいみたい」


 沿海州は町と言えるような大きな集落はない。

 それぞれ小さな村々がその近辺の漁場を縄張りとして互いに不可侵の関係にあるという。

 それこそ昔は小競り合いも多かったらしいが、カインやシルヴィアが商売の重要性を伝え、経済と流通を沿海州の村に浸透させ、相互の連携が重要である事を教えたのだった。


「商人ギルドのお陰で交易も盛んになって、小さな漁村だった沿海州も段々豊かになってきているみたいだけど、それでも一番大きな港を持っているのがスターベイの村だって言っていたから」

「なるほどそれはいいな。よし、主要な連中にスターベイに集まるよう思念伝達テレパスで伝えてくれ。それが済んだら俺たちも向かおう」

「ウィブに乗っていったらすぐだと思うよ」

「ああ、それは楽で助かる」


 俺たちの会話に、ワイバーンのウィブが小さく翼をはためかせた。


「この溶岩の荒野だが、火に強い連中はいるかな。こんなにしてしまってなんなんだが、人間ではとてもじゃないが耐えられないからな」

「そうねえ、魔族でもこの溶岩は難しいと思うけどなあ。妖魔で炎の精霊を使役しえきする人がいたと思うけど、そういうのに聴いてみるのもいいかもね」

「妖魔か。イフリートやサラマンダーにはいい餌場になるかもしれない。適当な連中がいたらあてがっておこうか」

「それがいいかもね。こんな所でも棲み家にできる者がいるかもしれないし、ヴォルカン火山に蜥蜴人間リザードマンが棲み着いていた事もあったからね」

「ああ、あの時も熱かったなあ。そうか、それならこの灼熱の土地でも対処できるかもな。一区切り着いたら移住者を探してみよう」


 俺とルシルはそんな会話をしつつ、ウィブの背に乗った。


「話は尽きないようだが、そろそろ出発してもいいかのう?」


 ウィブののんびりとした声が聞こえてくる。


「ああ待たせたな、沿海州へ飛んでくれ!」

「承知した!」


 ワイバーンが大きく羽ばたくと、その動きに合わせて俺たちの身体も徐々に上昇を始めた。

 行く先は沿海州のスターベイ。海の見える村だ。

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