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突撃する二人

 五万の敵軍の中央へと降り立った俺たちは、手近な敵を次々となぎ倒していく。


「中心に近いとはいえ敵将は見当たらないな」

「そうね、そこまではアガテーも情報をつかみきれなかったって言っていたから」


 俺は済まなそうにしてうなだれるアガテーの姿を想像した。


「後方に控えて周囲を護衛されているような奴であれば前線の戦闘集団の中核にはいないだろうな」

「かもしれないわね」

「だがまあそれはそれで構わないさ。俺たちの目的としては敵兵力の削減が第一!」


 俺は気合いを入れながら向かってくる敵兵を返り討ちにする。

 俺の一振りで片手の指では足りない人数の敵が吹き飛ばされていく。


雲霞うんかのごとくとはよく言ったものだ」


 倒しても倒しても押し寄せる波のように敵兵が群がってくる。

 相手からすれば、飛んできたワイバーンからいきなり人が飛び降りて、そいつが縦横無尽に斬りかかってくるのだ。戦術も何もないだけにたまったものではないだろう。


「数で押してくるしかないのだろうが……それでは俺たちを倒す事はできないな」

「ええ!」


 俺は覚醒剣グラディエイトを振り回しつつ、距離のある相手にはRランクスキルの炎の槍(フレイムランス)を発動させる。

 ルシルはルシルでNランクスキルの雷の矢(ライトニングアロー)を辺り構わず放ち続けた。


「魔王の力を取り戻しただけではなく更に威力を増したようだな」

「妹のレイラが魔王の源を持っていた時の経験も受け継いだような感じなのよね」

「貸したら利息が付いて返ってきたという訳か」

「なんだかシルヴィアが言いそうな内容ね」

「違いない」


 軽口を叩きながらも敵を叩き続ける。

 旗指物を見るに奴隷の兵士たちと似たような紋章が見えた。


「捕虜たちが言っていた辺境三王国の旗にも見えるな」

「彼らが持っていた旗は真ん中に髑髏どくろの絵が描かれていたけどね」

「推察だが、その髑髏の印は奴隷の証なのかもしれない」

「納得」


 中央の髑髏マークがない旗が数多くはためいている。

 種類は三つ。コーム、クシィ、ブラッシュの旗のようだ。


「とすると辺境三王国の正規軍なのかもしれないが……」


 俺は更に敵兵を斬り伏せながら言葉を続ける。


「それにしては歯ごたえがなさすぎる。まだ奴隷の剣闘士、剣奴将軍のドレイクの方が骨のある戦いをしていた」

「それの方が楽でいいと思うよ」

「ああ、まだ敵はごまんといるからな」

「流石に五万は割り込んでいるでしょう、結構倒したもの」

「あ、ああ。そうだな」


 俺はまた乾いた咳払いを一つする。


「退けっ、距離を空けろ!」


 敵軍の混乱の中指示が飛ぶ。


「単純に斬り合うだけでは勝てないと踏んだか」

「ええ。でもこれなら私たちも中距離攻撃で」


 そうルシルが言っているところで、俺とルシルを中心として全方位を囲むように敵兵がひしめき合った。


「盾部隊前へ! 鱗の隊形を組め!」


 俺たちに面する部隊が一斉に盾を構えて並べる。

 身をかがめれば隠れる事ができるくらいの大きさの盾だ。隣同士の者たちが盾を寄せ合う事で盾の壁ができあがる。


「弓兵隊、構えっ!」


 部隊長の指示だろうか、更に声が聞こえると盾の壁の奥でつるを絞る音がした。


「てぇっ!」


 盾の壁の上から無数の矢が俺たちに向かって飛んでくる。

 一瞬、太陽の光さえさえぎるような大量の矢だ。


「おいおい、なんてぇ数だよ」


 つい俺の口から呆れにも似たつぶやきが漏れた。

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