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荒野の大軍

 会議場は沿海州の男たちが入ってきた事で賑やかさが増したようにも感じる。

 俺はその中で自分の考えを伝えた。


「命を守る、それが最重要事項だ。西の大陸からこの地を侵略しようとしてくる者が押し寄せる。俺たちは命を守らなくてはならない!」


 真剣なまなざしで皆が俺を見る。


「一時は侵攻を許しこの瘴気の谷も奪われた事があった。だがこれからは沿海州の皆も協力してもらい俺たちの地へ踏み入らせないようにする! ベルゼル、推定される敵の橋頭堡きょうとうほとなる位置を教えてくれ」

「はっ、それではこちらをご覧下さい。空間魔影皮膜シートビジョン


 ベルゼルは空中に幻の映像を投影した。この近辺の地図だ。


「おお! すげぇ……」


 沿海州の男たちが息を呑む。こういった幻術やスキルなどはあまり見た事がないのだろう。


「瘴気の谷の西にある荒野、その先が海になっております。奴隷の軍隊が上陸してきた場所もここに当たりますので同様に目的地となり得るでしょう。そして……」


 ベルゼルが指さすと西の荒野に続いて北の海岸沿いに光が複数点いた。


「沿海州にも敵の大艦隊が押し寄せてくる可能性が高いでしょう」

「理由を聞こうか」

「はっ、ゼロ様は既にお気付きの事かと存じますが他の者たちにも判るように説明いたしますと、西の荒野の先の海は切り立った崖になっており、船を着けるには適さない場所となっております」


 ルシルがベルゼルに質問をする。


「でも奴隷の軍隊は一万の数を超えていたのよ。船が着けられないならどこから上陸したというの?」

「はい、捕虜から得た情報ではこの海に流れ込む川を小舟に乗り換えて遡上そじょうし、ここの荒野の辺りで上陸したとの事です」


 ベルゼルは幻影の地図で、川に沿った位置に光の線を書き加えた。


「大船団だけではなく上陸の用意もしっかりしてきているという事だな」

「おっしゃる通りです」

「その上で奴隷の軍隊を先行して進めた。後続との連携は上手く取れていないようだったがまだ本隊が荒野に陣を築いていると見た方がいいだろう」

「まさしく。アガテー、それについて報告を」

「うん、判った」


 ベルゼルに促されてアガテーが説明を始める。


「この荒野には敵の本隊らしい軍が陣を張っていたんです。その数およそ五万……」

「五万!? 本当か!」


 バーガルが驚きで裏返った声になった。


「へ、陛下、五万の軍勢に対して我らの戦力では太刀打ちできませんぞ!」


 慌てたバーガルがまくし立てる。


「それよりも戦力を集中させて防備の厚い拠点で籠城戦を展開した方が……」

「それでは勝てませんぞ、バーガル王」

「ベルゼル侯、ならどうすれば……どこに逃げ、逃げると言うのだ!」

「逃げません。その必要もない」


 ベルゼルは幻影の地図にもう一枚の薄い地図を重ねた。


「ベルゼル、この大きさは……」


 俺は自分の考えとベルゼルの考えが同じかを確認する。


「はい、温泉です」

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