表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

289/1000

奴隷剣闘士上がりの戦士

 剣奴けんど。奴隷の剣闘士として闘技場で戦う者たちだ。


「その剣奴の将軍と言われるくらいになると、俺のスキルでも抵抗できたりすると言うのか。正直驚いた」

「おめぇすげぇなあ。あんな火、初めて見たぞ」

「そりゃどうも」


 俺は血まみれになっている剣を振り上げながら超加速走駆ランブーストで突進する。


「おおっと、速いなぁ!」


 剣奴将軍と呼ばれているドレイクは俺の攻撃をぎりぎりでかわす。

 超加速走駆ランブーストで瞬間的に間合いを詰めたというのにだ。


「ちぇっ、棒っきれも残ってねえや。本当にあの火はびっくらこいたぜ。ちょっと借りるぞ」


 ドレイクは遠巻きに見ていた味方の奴隷戦士の持っている刀を指し示した。


「はいっ!」


 奴隷戦士が答えると、奴隷戦士の持っていた刀が宙を飛んでドレイクの手元に収まったのだ。


「物体浮遊か何かのスキルか。俺の剣を奪えないという事は相手との意思の疎通が関係するのかもしれないが」

「お、よく判ってるねえ。これはオラが使える隷技れいぎの一つ、仲間の物渡しってやつだ」


 大きく湾曲した刀を手にしてドレイクがステップを踏む。

 刀を右に左に大きく振り回してその感触を確かめているようだ。


「オラは剣闘士として奴隷仲間を倒してのし上がってきたんだ。それが今じゃ将軍様なんて呼ばれてさ、自分の軍隊を持つくらいまでになったってんだから、奴隷って言っても判らねえもんだよなあ」


 ドレイクが刀を構えて俺に向き合った。

 俺も同じように焼け焦げた大地の上で覚醒剣グラディエイトを構える。


「コーム王国剣奴将軍、ドレイク……参る!」

「来い、レイヌール勇王国国王、ゼロ・レイヌール勇者王が相手になってやる」


 俺が宣言すると同時にドレイクが俺に向かって走り始めた。

 右手に持った刀は横に構えてなぎ払いを狙っている。湾曲している分攻撃範囲は俺の方が広いため、ドレイクは俺よりももう一歩踏み込む必要があるはず。


「と、思うだろ?」


 ドレイクは一度身を沈めると、立ち上がりざまに地面を蹴り上げた。

 灰が舞って俺の目に入る。


「しまっ!」

「遅い!」


 横に構えていた刀だったがいつの間にか頭上からの振り下ろしに変わっている。

 涙ぐみ視界がぼやける俺にもそれくらいは判った。

 縦に振られる刀に対しては下から斬り上げる事で対抗する。

 激しくぶつかり合う音が響き、俺の剣が相手の刀に当たった。


「あれを受けるとはおめえうめぇなあ!」

「汚い真似を」

「戦に綺麗も汚いもあるかい! それじゃあこれでどうだぁ!?」


 敵感知センスエネミーで反応していなかった背後からの攻撃が俺に当たる。


「なんっ!」


 直撃は避けたが俺の背中に別の刀が当たっていた。刺さりはしなかったが少し切り傷ができた程度。

 だがその一瞬でも、対人戦に特化した戦闘を繰り返していたであろう剣闘士上がりには十分だったかもしれない。


「ゼロ!」


 ルシルの叫び声が俺の耳に入ってくる。

 ドレイクの刀は俺を袈裟斬りにしようとしていたが、血しぶきを上げたのはドレイクの方だった。


「武器の質に救われた……な」


 ドレイクが傷口を押さえながら数歩後ずさる。その手には折れた刀が握られていた。これは負け惜しみではなくドレイクの使った刀より俺の剣が強かっただけだ。


「お退き下さい将軍!」

「ここは俺たちが!」


 奴隷の兵士たちがドレイクをかばうようにして俺の前に立ちはだかった。


「邪魔だ、奴に生き恥をさらさせるな」


 俺は兵士たちを斬り倒しながらドレイクへ向かおうとするが、ドレイクは既に隊の中に消えた所だ。


「深追いは危ないよゼロ」

「そうだな、なぜ背後から攻撃が来たのか……。恐らくはあれだろうが、気にしなくてはならない事が増えるというのは面倒だな」


 俺は深く呼吸をしてドレイクの消えた方を見つめていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ