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遭遇戦

 俺たちはウィブの背に乗って西へと向かう。


「ルシル、ベルゼルと思念伝達テレパスで反応は無いか?」

「駄目だよゼロ……。呼びかけているんだけど返事が無いよ。遠いからなのかは判らないけど……」

「そうか」


 飛行中もルシルに何度かベルゼルやバーガルと思念伝達テレパスができないか試してもらっているのだが成果にはつながらなかった。


「気を失っているだけかも知れないし、また後で確認してみよう」

「そうね」


 ワイバーンの飛び方は数度羽ばたいて上空へ行き、そこから滑空するような動きになっていて、基本的には羽ばたく時以外はそれ程揺れないのだが今は速度を上げているために常に風の影響を受けて小刻みに揺れていた。


「済まないなウィブ、無理をさせる」

「いやいや儂ももっと速く飛べればよいのだがのう、これで精一杯での」

「だがあまり無理はするな。瘴気の谷に着いてから何が起こるか判らんからな」

「ふむ……」


 何者かの襲撃を受けて壊滅状態になっているという瘴気の谷だ。敵と鉢合わせという事も容易に想像できる。


「戦える余力は残しておくかのう」

「頼む」

「うむ、承知した」


 ウィブは大きく一度力強く羽ばたく。

 急上昇する俺たちは流れる雲を突き抜けて太陽の下に飛び出す。

 眼下にはものすごい速度で大地が過ぎ去っていく。


「ゼロさんあそこ見て!」


 アガテーが指さす方向。草原の中に何か粒のような物が見える。


「遠くてよく判らないが……」

「設営の跡? 違う、まだ野営している!」


 流石は最強の傭兵として名を馳せた熊と呼ばれ、その中でも偵察や隠密に長けたアガテーだ。遠目が利く上に判断が早い。


「どこの集団か判るか!?」

「うーん……旗があるよ。でも見た事が無い紋章……少なくともレイヌール勇王国と同盟している紋章の中には無いはず」

「ここまでは我が軍も配備していない。開拓民も進出しているという報告は無いからな……どうやら向こうも俺たちを見つけたようだ」


 ウィブが高度を取ってもしもの時に備える。


「スキルを使われたら判らんが、弓くらいでは届かんかのう」

「そうだな、俺が円の聖櫃(サークルコフィン)を掛ける。物理攻撃完全防御になってから降下しよう」

「承知した」


 俺はSSSランクスキルの円の聖櫃(サークルコフィン)を発動させる。


「我らを全ての物質から護れ。円の聖櫃(サークルコフィン)!」


 俺を中心にウィブの全身を含めて球状の透明な膜ができあがった。


「それでは行くかのう!」


 ウィブは地上の集団に向かって急降下を始める。

 その様子を見てか、集団の動きが慌ただしくなった。


「ほう、上空からだとよく判るが少数ながらも陣を敷いているな」


 人数は少ないながらも幾何学模様のように整然と並んでいる様子から、かなりの練度を備えていると見ていいだろう。


「来るか」


 俺の耳の奥がかすかに痛み出す。Nランクスキル敵感知センスエネミーが自動的に発動したためだ。

 俺に敵意を持った者がいた場合に発動するこのスキルは、低ランクだが常時稼働させておくとこういった時に役立つ。


「ウィブ、俺が降りられる高さまで急降下したら後は上空で待機してくれ」

「気をつけてのう」

「ああ。ルシルとアガテーを頼む」

「承知」


 矢が何本も向かってきて円の聖櫃(サークルコフィン)にはじき落とされた。

 その中をウィブは急降下から地面すれすれの高さで首を上げて地をはうように飛行する。


「今!」


 ウィブの掛け声に合わせて俺はワイバーンの背中から飛び降りた。

 着地した勢いで俺のかかとが地面に二本の線を作る。

 そのまま走り出して集団に向かう。

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