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操縦者

 人の十倍はあろうかという大きさの鉄巨兵ゴーレムは、その大きさや重さからは考えられないような機敏な動きをしてみせる。


「アガテー、隠密入影術(ハイドインシャドウ)は使えるか?」

「使ったところであんなデカ物には効き目ないよ。だいたい隠れ場所ごと叩き潰されたら意味がないさ」

「確かにな」


 俺は試しに鉄巨兵ゴーレムに斬りかかってみるが、俺の剣をもってしても傷が付かずに弾き返されてしまう。


「この動きといい、ただの鉄巨兵ゴーレムではないな。魔法で動かして全身も魔力の膜で覆っているように思える」

「それでこれだけ素早く動けるっていうの!?」

「俺の推察だがな」


 鉄巨兵ゴーレムは足を踏みならし拳を叩き付けてくる。

 振り払った腕に当たった盗賊団の男たちが吹き飛んでいく。


「敵味方関係なしかよ」


 アガテーは身軽に鉄巨兵ゴーレムの攻撃を避ける。


「なかなかお前も身のこなしが軽やかだな」

「ちょっとゼロさん、胸ばかり見てないでしょうね!」

「そんな訳あるか!」


 俺の剣幕に驚いたのか、小さい声でアガテーがつぶやいた。


「まあそれでもいいんだけどさ……」


 俺は聞こえなかったふりをして鉄巨兵ゴーレムからの攻撃を躱す。


「見たか! これが俺らの切り札、鉄巨兵ゴーレムだぜ!」


 盗賊団の男が吠える。

 鉄の鉱山を押さえていたという事はこいつにつながっていたのか。だとしても筋肉馬鹿の盗賊団が鉄巨兵ゴーレムを操れる程魔法や操作スキルに精通しているとも思えない。


「それにだ」


 俺たちは鉄巨兵ゴーレムの動きを見切って避ける事ができる。確かにかすっただけでも深い傷を負うだろうが当たらなければ大丈夫だ。

 だが盗賊団の男たちはそうもいかないようで、何人かは躱しきれずに巻き添えを食って吹き飛ばされてしまう。


「ど、どうして……!」


 困惑顔の男が喋り終える前に鉄巨兵ゴーレムの拳が男を弾き飛ばす。


「どうやら制御がうまくいっていないのかもしれないな」

「ちょっとこの鉄巨兵ゴーレム、動きがおかしくなっていない?」


 言われてみれば鉄巨兵ゴーレムが微妙に動いたり止まったりを繰り返しているように見える。


「お?」


 鉄巨兵ゴーレムの胸の装甲が内側から開いた。人が一人くぐれる程の空間がそこにあって、中から何かが飛び出す。


「何が落ちてきた!? 人?」


 落ちてきたのは一度撤退した盗賊団の男だ。


「ぐぎゃぅ!」


 男は背中から地面に落ちて肺の中の空気が全て吐き出されたのだろう。あえぎながら身体をよじって逃げようとする。


「あれは肋骨も何本かやられているな。下手をすれば背骨もいっているかもしれん」


 俺は冷静に様子を見守った。鉄巨兵ゴーレムの足が男の上に乗りかかるのを。


「ぶじゅっ」


 男の声だろうか、潰れた蛙の鳴き声のようなものが聞こえた。


「それで、大丈夫か?」


 俺は鉄巨兵ゴーレムに向かって話しかける。こんな状況を作り出せるのはあいつしかいない。


「大丈夫だよゼロ!」

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