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超高高度からの偵察

 俺たちはユクモ山に入った。

 うっそうとする森の中、藪をかき分け進んでいく。


「ルシル、開けた尾根に出たらウィブを呼ぼう」

「そうだねゼロ」


 俺とルシルは森の中を進みながら次の動きを相談する。


「ウィブって何?」


 ウィブを知らないアガテーは何の事か理解できないのは当然だ。


「ウィブはワイバーンでな、色々と手伝ってくれるんだよ」

「へ!? ワイバーン!?」

「今度落ち着いたら紹介するさ」

「へぇ~、すごいんだね! だとすると空から偵察できたりするのかな!」


 多少興奮した様子でアガテーが質問してくる。


「今回は超高高度からの偵察だけを頼むつもりだ。ワイバーンの視力ならとんでもない高さからでも地上の様子が判るからな」

「え~、あたしたちが乗ったりできないの~?」

「俺たちが見えるくらいの高さだと相手にも気付かれる。それでは警戒されて意味がないからな、お前の得意とする隠密行動ができなくなるぞアガテー」

「なるほど~。言われてみればそうかもね。ちょっと残念だけどまあいいか。狼退治が終わったら乗せてよね」

「ああ、考えておこう」


 大きな鉈で草をかき分けながら上機嫌でアガテーが進んでいく。

 その様子を見ながら俺にルシルがささやきかけてきた。


「あんな約束しちゃって大丈夫なの? ワイバーンライダーなんてこの近辺じゃああまり聞かないから、ゼロの事バレちゃうんじゃない?」

「まあ別にもう隠す必要もなさそうだけどな、その時はその時で改めて説明するさ。さあ尾根が見えてきたぞ」


 森の木々が段々と少なくなって山の稜線りょうせんが見えてくる。

 さえぎるところがなくなれば山肌を抜ける風が直接身体に吹き付けてきて、森の中を歩いていて噴き出していた汗が一気に冷やされて引っ込んでしまうくらいだ。


「気持ちいいね、ゼロ」

「風は強いが歩いてきた俺たちには丁度いいかもしれないな」


 俺たちより少し先を歩いていたアガテーが戻ってくる。


「この辺りで炉の煙は見当たらないね。もっと奥の方なのかも」

「だろうな。まだ下の方を見ると街道や町が見える。こんな所ではすぐに見つかってしまうだろう」

「確かにね。で、ワイバーンはどうなのかな?」


 目を輝かせてアガテーが質問してきた。


「ルシルどうかな。思念伝達テレパスで連絡は取れそうか?」

「うん大丈夫。ウィブとは連絡が取れているよ」

「よし。では伝えてくれ、人間からは見えないくらいの高さからこの山の周辺で炉の煙が出ている場所がないか確認してくれと」

「判ったわ、ちょっと待ってて」


 ルシルがウィブと思念伝達テレパスで情報を連携する。


「ゼロさん、今ルシルさんワイバーンとお話ししているの?」


 アガテーは空を見上げながらどこかにいるであろうウィブの姿を探していた。


「そうだよ。もう少し待っていてもらえるかな」

「あの上にいるのかな?」

「多分、な」

「え、ゼロさんも見えてないの?」

「超高高度で飛翔するワイバーンは流石に見えないさ。でもルシルのスキルなら相手が特定できれば連絡できる。それには高さは関係ないからな」

「へぇ、便利なんだねえ」

「俺もそれで何度も助けられているよ」


 アガテーは上空を見上げながら跳んだり跳ねたりする。

 その度にボリュームのある大きな胸が縦に揺れていた。


「ゼロ~」


 そんな俺をルシルがにらむような目で見ている。


「あ、ルシル終わったのか?」

「まあね。それよりも今アガテーの身体ばかり見ていなかった?」

「さ、さあ。で、ウィブはどうだって?」

「地形と方角を教えてくれたよ。今私たちがいるところから北へ、尾根を二つ越えたところに伐採された場所があって、何本か煙が上がっているところがあるって」


 俺はルシルから得られた情報を整理する。


「伐採か。火を使うのに辺りの木を使った結果だろうな。それに尾根を二つという事は、その辺りは山に囲まれていて平地からは目立たない場所にある訳だ。奴らも考えているな」

「そうね。で、どうする? ウィブに乗って急行するっていうのもあると思うけど」

「予定通り隠密行動を取ろう。奴らの動きを見たい」


 俺の意見に二人とも賛同してうなずいてくれた。

 アガテーはウィブに乗れなかった事が少し残念そうだったが。

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