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首都凱旋

 ルシルたちに聞くと、ここは俺がムサボール王国を出て初めて拠点とした石柱の立っている丘を中心とした町という話だった。


「で、この町の名前がレイヌール宮殿パレスだって!?」

「そうだよゼロ、ゼロが初めて造った町なんだもん」


 平然とルシルが答える。


「おお親方! お目覚めですかい!?」


 小さな窓から大きな顔が覗く。


「ヒルジャイアントのドッシュか! まさかお前たちがこの地に町を築いたというのか」

「ゼロ温泉以来でやすね親方!」


 窓枠いっぱいに顔を近付ける。俺は起き上がってベッドから降りた。


「あいたたた……」

「あまり無理しちゃ駄目だよゼロ」


 ルシルが肩を貸してくれる。俺よりも小さい女の子に寄りかからないとまともに立てないなんて少し情けない気もするが仕方がない。


「まだ脇腹が痛むのか立つのに力が入らないな……助かるよルシル」

「いいよ」


 ぶっきらぼうだが嫌がる様子もなくルシルは俺を支えてくれた。

 少し高い天井の部屋を出て屋敷の入り口を開ける。


「おお、勇者王がお目覚めになったぞ!」

「レイヌール勇王国の英雄王、ゼロ様!」


 小高い丘の上に建っている屋敷なのだろう、辺りは少し低い平地になっていて周りには数本の遺跡のような石柱が立っている。

 道路が整備されていて大通りを挟むように様々な様式の家が建ち並んでいた。

 そして屋敷の前には大勢の民衆。


「ゼロ様!」

「俺たちを救い、住むところと食べる物を与えてくださったレイヌール勇王国の長!」

「ニンゲン、ウマイ?」


 相変わらずヒルジャイアントのイチルーはドッシュに頭を小突かれていた。


「ルシルこれは……」

「私もここに到着してから知ったんだけどね」


 ルシルの説明では、俺がムサボール王国の上層部を駆逐して王都の近くで温泉を掘り当てたりした後に、ヒルジャイアントのドッシュたちや温泉街を造ってくれたノームたち、それに城塞都市ガレイの商人や市民、魔族のベルゼルたちがこの屋敷を建て、屋敷を中心に森を切り開き開拓し町を造り上げてくれたのだという。


「相次ぐ戦乱で食べ物に困った人たちも大勢来てね、どんどん町が大きくなっていったんだって」

「そうだにゃー!」


 となりからひょっこりとカインが現れる。


「カイン、昼間だけど猫耳娘のままなのか?」

「そうにゃ、これはボクが……」


 カインが小刻みに震えたかと思うと、耳が髪に馴染み身体も凹凸のない少年のものに変わっていった。


「……自分で制御できるようになったんです」

「ほう、それは便利だな。だから教団に捕らえられていた時も女の子でいられたという事か」

「そうなんです。喰らう者(イーター)のユキネさんが言うには、動く死体(ゾンビ)に噛まれた後遺症で身体変化メタモルフォーゼの能力にも影響が出たのではないかと言うことで」

「怪我の功名というやつか。何より元気でよかった」

「はいっ!」


 カインは満面の笑みで応える。

 そのカインの後ろではシルヴィアが俺たちのやりとりを嬉しそうに眺めていた。


「ここは俺が勇者を解雇されてから逃亡の末にたどり着いた初めての拠点だ。皆の働きでこのような立派な町に成長した。俺は何もしていないというのにな」


 周りの連中が苦笑する。


「俺は皆に報いるためにもこの町を正式な王都としたい。レイヌール勇王国の首都として更に発展し、皆の生活を豊かなものにしたい!」


 集まった人々から歓声が沸き起こった。


「ゼロ様!」

「我らが勇者王!」


 この日、レイヌール暦青の月一日にレイヌール勇王国が正式に領土を持った王国となった。

【後書きコーナー】

 今回で第二部が終了となりました。


 明日の投稿となる次話からは、第三部が始まります。

まだ謎のままの物がかなりたくさんありますので、どれだけ回収できるか頑張って書き続けると共に、ゼロたちの冒険を作者である私も楽しんでいきます。


(第二部終了を宣言すると、これでお腹いっぱいになってしまう読者さんもいるのじゃないかなあ、ってちょっと不安でもありますが……)


 引き続き、お楽しみいただけると嬉しいです。

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