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幽霊の正体見たり枯れ尾花

 星帝せいていの雷撃が広間の天井を突き破り、更に上の階も突き抜ける。

 ドワーフの造った町の空を抜けて瘴気の雲まで見えた。


「俺のルシル……」


 俺が抱きかかえている小さな身体から、星帝の物とは違う小さく高い声が聞こえる。

 俺はルシルの顔を正面から見つめた。その目がしっかりと俺を捉えているのが判る。目に生気が宿っているのだ。


「ルシル! 意識は!」

「ゼロ……」

「ルシル!」


 広間に響き渡る平手打ちの音。


「誰があんたの物だって言うのよ!」

「え、そこかよ……」

「それにもういいから、手を放して」


 いつものルシルだ。俺の言葉が鍵になったのかルシルの意識が戻ってきたという事か。


「あ、ああ。済まない。きつく絞めすぎたか」

「そうじゃないけど……いいから放して!」


 俺はルシルに言われるがまま手を放してルシルを自由にする。


「済まなかった、とっさのことで」


 戻ってきた安堵感と急に平手打ちをされた驚きでしどろもどろになってしまった。


「いいのよゼロ。助かったわ……」


 ルシルの瞳が闇に沈んだ。


「勇者ゼロ!」


 セシリアの叫び声が俺に届く。


「え……」


 左の脇腹に猛烈な熱を感じた。

 皮膚が割け骨を割り内臓を掻き乱す衝撃と痛み。


「熱いと思ったのは……痛みだったか。そうだよな俺は温度変化無効のスキルを持って……」


 急に咳き込んで俺の口から大量の血が溢れ出た。

 なんだこれは。俺が血を吐いただと?


「ゴフッ、ゴボッ……」


 俺の口からは言葉ではなく泡立った血が噴き出してしまう。

 ルシルの手が雷に覆われている。その手刀が俺の脇腹に突き刺さっていた。

 雷をまとう事で俺の防御力も抵抗力も突き抜けて肉体にまで攻撃が届いたのか。


「ゼロ、か。器の巫女の記憶を探って正解だったわね」


 ルシル、何を言っているんだ。


「大地に根付きし者の記憶にも時には役に立つという物だのう」


 ルシルの声で……無粋な台詞を口にするな。


「さあ星帝たる余の手にかかって果てるがよい!」


 ルシルが大きく口を開けて笑う。


「ガッ……!」


 ルシルの手刀が俺の脇腹を深くえぐっていく。

 ルシルの口に見た違和感……。

 口の中に何かがいる(・・・・・)! 何かが俺を見ている(・・・・)


「朽ち果てよ、大地に根付きし者よっ!」


 勝利を確信したルシルの顔に俺はつかみかかり、大きく開けた口に俺の口を近付ける。

 それに合わせて俺が顔を近付けた。


「なっ、ばっ!」


 ルシルの身体を乗っ取っていた奴が慌てて俺から離れようとするが、俺は両手で相手の頭を固定させて身動きを取れないようにしている。

 こうなれば脇腹の痛みはどうでもいい。


「ぐっ!」


 俺は相手の口に吸い付くと、中に見えた異物を思い切り吸い出す。

 前歯にそれが触れたところで千切らないように加減をしながら噛んで押さえる。


「ピギャァ!」


 甲高い叫び声が鼓膜を震わせる。

 あまりの絶叫に俺の耳から血が流れてくるのを感じた。

 それでも俺はルシルの口の中にいた異形の物を噛んだまま引きずり出す。


「ギャッ!」


 俺が床に吐き出したそれは、子供の手の平程の物体で、芋虫のような身体に小さな人間の手が生えているような化け物だった。

【後書きコーナー】

 第二部は、この次三話分で終わる予定です。少し駆け足だったかもしれませんが。

 第三部の初回投稿は、2019年7月1日を予定しています。


 →と、予定通りになりました。

  第三部も引き続きよろしくお願いします(2019年7月7日追記)

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