表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

255/1000

でていけ

 ルシルの身体が床から離れる。少しだけ浮遊している状態で俺たちを見回していた。


「これだけの数と魔力でよく余をこの身体へ移すことができたな。優秀な信者が数多あまた居ったのだろうな」


 ルシルに取り憑いた星帝の低い声を聴いてバーガルたちが頭を床にこすりつける。


「もったいなきお言葉! 我ら星帝様のしもべでございますれば国を挙げての此度こたびの儀式、つつがなく成就されましたこと、お慶び申し上げます!」

「よいよい、おもてを上げよ。して、そこの娘どもは降臨のための魔力源と見えるが」

「ははっ、近隣より汚れなき娘をかき集めておりまする」

「ほう、だがまだ純度の高い魔力が残っておるようだな」


 星帝がセシリアたちのいる女の子たちの集団に向けて手をかざす。


「くっ、これは……!」


 女の子たちから魔力の光が帯となって星帝の手の平に吸収されていった。

 徐々に女の子たちの顔から生気が失われていく。


「これは甘露かんろ、ふむ、美味である」

「それは何よりにございまする」


 星帝は舌なめずりをする。


「き、貴様ぁっ! ルシルの身体で下卑げびた真似をするなっ!」


 俺は星帝の喉元に左手でつかみかかり、右手は拳を作って振り上げた。


「さてできるか? そなたはこの娘に対して常軌を逸した想いを持っているように見受けられるがな」

「ぐっ……!」


 俺は拳に力を入れるがその手は振り上げたままだ。


もありなん。そなたではこの身体を傷つけることは」


 俺は思いっきり星帝のこめかみに右拳を叩き込む。


「ぶがはっ!」


 星帝は吹き飛ばされて壁に激突する。


「よもや……余が話をしている間に……」


 超加速走駆ランブーストで一気に距離を縮め、また星帝の胸ぐらにつかみかかった。


「おいルシル! いつまで寝ていやがる!」


 俺は星帝の額に自分の額をくっつける。

 その状態で大声を上げてルシルに話しかけた。


「愚かなり大地に根付きし者よ。ひとたび余が器の巫女にりし時には元の意識などとうに霧散しておるわ」


 こめかみから血を流して本来であれば意識も朦朧もうろうとしている状態だろうが、星帝は思念体だからか会話する余裕すら見える。


「下郎、その汚い手を放せぇ!」


 星帝の身体が雷を帯びた。

 雷の衝撃と電熱で焼かれた服が火花を散らす。


「俺はお前を放さないぞ!」


 俺は星帝の思念体が入ったルシルの身体を抱きしめる。


「放せと言うに!」


 星帝の電撃が更に勢いを増す。

 高い天井にまで届く程の雷の柱ができるが、俺に直撃しても手を放すことはない。


「これくらいで手放すようなら元々勇者が魔王の面倒なんか見ないんだよ!」


 俺は更に力を入れてルシルの小さい身体を抱きしめる。


「星帝だかなんだか知らないが、ルシルの中から出ていけ!」


 俺は叫ぶと同時にルシルをきつく抱きしめ、ルシルの頭を抱えるようにして俺の首元に押しつけた。

 電撃のせいで刺激のある抱擁ほうように、俺の全身がしびれるような感覚になる。


「俺のルシルから出ていきやがれ!」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ