でていけ
ルシルの身体が床から離れる。少しだけ浮遊している状態で俺たちを見回していた。
「これだけの数と魔力でよく余をこの身体へ移すことができたな。優秀な信者が数多居ったのだろうな」
ルシルに取り憑いた星帝の低い声を聴いてバーガルたちが頭を床にこすりつける。
「もったいなきお言葉! 我ら星帝様の僕でございますれば国を挙げての此度の儀式、つつがなく成就されましたこと、お慶び申し上げます!」
「よいよい、面を上げよ。して、そこの娘どもは降臨のための魔力源と見えるが」
「ははっ、近隣より汚れなき娘をかき集めておりまする」
「ほう、だがまだ純度の高い魔力が残っておるようだな」
星帝がセシリアたちのいる女の子たちの集団に向けて手をかざす。
「くっ、これは……!」
女の子たちから魔力の光が帯となって星帝の手の平に吸収されていった。
徐々に女の子たちの顔から生気が失われていく。
「これは甘露、ふむ、美味である」
「それは何よりにございまする」
星帝は舌なめずりをする。
「き、貴様ぁっ! ルシルの身体で下卑た真似をするなっ!」
俺は星帝の喉元に左手でつかみかかり、右手は拳を作って振り上げた。
「さてできるか? そなたはこの娘に対して常軌を逸した想いを持っているように見受けられるがな」
「ぐっ……!」
俺は拳に力を入れるがその手は振り上げたままだ。
「然もありなん。そなたではこの身体を傷つけることは」
俺は思いっきり星帝のこめかみに右拳を叩き込む。
「ぶがはっ!」
星帝は吹き飛ばされて壁に激突する。
「よもや……余が話をしている間に……」
超加速走駆で一気に距離を縮め、また星帝の胸ぐらにつかみかかった。
「おいルシル! いつまで寝ていやがる!」
俺は星帝の額に自分の額をくっつける。
その状態で大声を上げてルシルに話しかけた。
「愚かなり大地に根付きし者よ。ひとたび余が器の巫女に入りし時には元の意識などとうに霧散しておるわ」
こめかみから血を流して本来であれば意識も朦朧としている状態だろうが、星帝は思念体だからか会話する余裕すら見える。
「下郎、その汚い手を放せぇ!」
星帝の身体が雷を帯びた。
雷の衝撃と電熱で焼かれた服が火花を散らす。
「俺はお前を放さないぞ!」
俺は星帝の思念体が入ったルシルの身体を抱きしめる。
「放せと言うに!」
星帝の電撃が更に勢いを増す。
高い天井にまで届く程の雷の柱ができるが、俺に直撃しても手を放すことはない。
「これくらいで手放すようなら元々勇者が魔王の面倒なんか見ないんだよ!」
俺は更に力を入れてルシルの小さい身体を抱きしめる。
「星帝だかなんだか知らないが、ルシルの中から出ていけ!」
俺は叫ぶと同時にルシルをきつく抱きしめ、ルシルの頭を抱えるようにして俺の首元に押しつけた。
電撃のせいで刺激のある抱擁に、俺の全身がしびれるような感覚になる。
「俺のルシルから出ていきやがれ!」