祭壇からの生還
俺の向かう先には祭壇に寝かされたルシルがいる。
だが、それを邪魔する奴らが目の前に立ちはだかっていた。
「そこの派手な服装をしているおっさんがバーガル王か。それに親衛隊最後の一人ケンタロウというのがお前か。あとは教団の幹部たちとまあここにお偉いさんが集まってきているという事だな」
「ふっ、ははははっ! それを知って少数で乗り込んでこようとはいい度胸だな!」
バーガルは豪快に笑い飛ばす。
「この娘は我らにとっても星帝をこの地にお招き入れる重要な依り代。よかろう、どちらにとっても大切と言うことであれば勝ち残った方がこの娘の……」
いい加減俺も敵となる奴の口上を最後まで聴くつもりはない。
「いいから命を捨てる覚悟がで来ている奴だけかかってこい。他は逃げるなり消えるなり好きにしろ。ただ……俺の邪魔はするな!」
俺は超加速走駆を発動させてルシルに迫る。
途中に立ち塞がる奴は俺の高速移動で弾き飛ばす。
「ルシル、大丈夫か……」
次の瞬間には俺の身体は祭壇にあった。
俺はゆっくりと意識の無いルシルを抱きかかえる。
呼吸も落ち着いていて命に別状は無さそうだ。
「なっ! いつのまに!」
バーガルが驚く。その脇をケンタロウがバネのように飛び出して俺に向かってくる。
「ルシル、少し我慢してくれよ」
俺は剣を一閃するがケンタロウの身体を素通りしてしまう。
「ケケケッ、このケンタロウ様に剣など効くかっ!」
「そうか、それならこれはどうだ。SSランクスキル豪炎の爆撃っ! 爆ぜろっ!」
俺の左手から激しい炎の塊が飛び出しケンタロウに当たったと同時に巨大な爆発が起きる。
「おおっと、これは俺の失策だったか?」
相手が水に身体を変えられる奴だ。辺りは真っ白な水蒸気に覆われてしまった。
「ケケケッ、ケンタロウ様には炎も効かねぇのさ!」
水蒸気が集まってまた人の形を作る。
「さあてそれは困ったな。ケンタロウとやら、お前もその身体では何かと不自由だろう」
「いったい何を言っているんだぁ、この俺ケンタロウ様はこの身体で今の地位を築いたんだぜ、不便どころか最強の身体だってぇの!」
ケンタロウが腕を鞭のようにしならせて俺を攻撃した。
俺は左手一本で印を結びながらケンタロウの腕をつかむ。
「Rランクスキル凍結の氷壁」
俺がスキルを発動させることでケンタロウの腕が先の方から凍り始めた。
「な、ひぃっ!」
「切れなく燃やし尽くせないのであれば凍らせてしまえばいい。氷の壁に埋まれ」
徐々にケンタロウの身体が氷に覆われていく。
恐怖に目を見開いた姿の像ができあがった。
「俺はこのまま素直に帰ってやろうと思うが、邪魔する奴はいないな?」
俺はルシルを抱きかかえて祭壇から一歩踏み出す。
周りにいた魔族たちは息を呑んで後ずさるのだった。